どこの国でもないものがたり

Chiaki
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昨年からのろのろと病院の待ち時間に読んでいた『小川未明童話集』を読み終わった。1話がだいたい3,4ページなのだが数行のうちにスッと物語の世界に引き込まれていく。導かれるようなやさしさでいて、無駄のない足取りで。その世界の空気に包まれわたしはその目で見る。小川未明の世界だ。

日本のどこか片田舎を思わせる話があると思えば、次の話は知らない外国の石畳みの街並みを思わせたりする。自由自在に描かれる世界はどこかの国であるようでどこの国でもない。起承転結も見知った童話の型にひとつもはまることのない、今までどこにもなかった物語。「小川未明やばい」と、家に帰るなり家族に報告した。いまさらじゃない?と笑ったと思う。確かに文豪も令和の時代にそんな褒めかたをされるとは思わなかったかもしれない。

“まず言えることは、吾国にも外国にも、これに似た作品がないということです。” なるほど解説のその通り。それならば次の読書はいっそのことどこかで聞いたことのある物語はどうだろう。その文庫のはしがきには “この日本昔話集の中に、あなた方が前に一度、お聴きになった話が幾つかあっても、それは少しも不思議なことではありません。”とある。日本各地で蒐集された物語、柳田國男の『日本の昔話』を引っ張り出してみる。

今日のごはんは揚げもの祭り。家族の買ってきたエビフライ、トンカツ、カボチャのコロッケ。そろそろ包丁も握れそう。久々に書きものをしていたら「ペンを握ってる……!」とびっくりされた。まるでクララが車椅子から立ち上げたときみたいに。手首をかばって生活しているので違うとこが筋肉痛です。

@hica
思い出のまじった日記みたいなエッセイみたいなものを書いています。