精神病理の次元モデルにおけるパーソナリティと症状

hidekis
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公開:2026/4/29

一か月以上かけて,サイバネティクス・ビッグファイブ理論と精神病理のサイバネティック理論に関わる文献を集中的に読んできた。個人的には,これらの理論の発想がない状態には戻れないくらい,大きな影響を受けた。

この2つの理論の概要に関するブックチャプター。基本的にはこれまでの論文で述べられていた内容だが,以下の引用にあるとおり,パーソナリティ症(PD)という診断区分そのものに疑問を投げかけている。

There are no such things as “personality disorders” distinct from other mental disorders. Distinct personality disorders cannot be identified based on their developmental course or their symptoms. ... Rather, personality traits contribute to risk for all forms of mental disorder, and most symptom dimensions are coextensive with dimensions of normal personality, such that persistent symptoms of psychopathology are typically extreme or maladaptive variants of normal personality traits.

PDはほかの精神疾患よりも症状が安定していて持続すると想定されることがある。しかし,PDはほかの精神疾患と同様に改善するため,この想定は経験的に間違っている。また,疾患の発症過程の観点でも,PDとほかの精神疾患を区別することはできない。

精神病理の階層的な次元モデルであるHiTOPでは,一過性の症状とより持続的な特性を区別せず,同一次元上に配置している。これは,長く持続する症状は特性と区別できないことを意味する。(ただし,特性はある特定のタイムフレームや想起期間というよりも,全般的なものとして評価されるため,症状を測定する想起期間は特性のものと違いなくなるという仮定は検討の余地がある。)そのため,HiTOPの次元上にある精神病理は,十分長く持続しているとしたら,(不適応的な特性という意味で)すべて「パーソナリティ症」と理解することができる。

PDの中核的な特徴は,自己および対人関係機能の持続的な機能障害(impairment)であり,主に,(1)自己志向性の欠如,(2)混乱したあるいは一貫しないアイデンティティ,(3)親密な関係の維持困難,(4)共感性の欠如で構成される。因子分析を行うと,自己の機能障害はHiTOPの内在化スペクトラム(神経症傾向や否定的感情など)に,対人関係の機能障害は離隔(detachment)と対立(antagonism)スペクトラムにそれぞれ布置される。経験的知見をふまえると,HiTOPではすべてのスペクトラムで症状と特性が一緒に布置されるため,「パーソナリティ症」を独立したカテゴリとすることに否定的なのだろう。

DeYoungとKruegerによるCB5Tと精神病理のサイバネティック理論に関する文献は一通り読んだはず。あとはパーソナリティ構造の文献を確認して,Grayの強化感受性理論とサイバネティクスを勉強しよう。

@hidekis
こころに関わる支援や研究をしています。