ある監督の配信映画に出演する俳優さんについて、作中で父親を喪っていることと、俳優さん自身も父親を喪っていることから、「彼の傷を抉るような話だよね」というツイートがおすすめで流れてきた。だいたい私が腹立たしく思うツイートはおすすめタブから流れてくることが主なのだが、これもその一種で、目に入った瞬間に脊髄反射的な拒絶反応を起こしてブロックしてしまった。
しばらくしてから「特に過激な発言でもないのになぜ」と思って自分の気持ちを紐解いていると、先日車のなかで聞いた(私が個人的に好きじゃない)アイドルプロデューサーにバカリズムがゲスト出演したラジオを思い出した。脚本業とお笑い業について話をしていたのだが、私が大好きなドラマ「ブラッシュアップライフ」についても触れられていた。書き起こしなどが手元にあるわけじゃないので記憶を元に、且つ私の受けたニュアンスを交えながら書くので正確性は著しく劣るが、「やっぱり親になったことって脚本に影響を与えたりすんの?」と某プロデューサーは問うた。この時点で若干キ…いや、疑問を感じたのだが会話は澱みなく流れる。「あぁそうですね、ちょうど生まれる前?妻の妊娠がわかった頃くらいにブラッシュアップライフを書いてたんですけど、親目線ってのはやっぱありましたね」とバカリズムは答えていた。いや絶対ないやろ、と心の中で盛大に突っ込むくらいには嘘っぽいトーン、ホストの質問を無碍にしないように答えてるんだな〜と私は捉えた。というのも、ブラッシュアップライフという作品は主人公の麻美が何度も転生する話なのだが、そこまで親としての目線を(良くも悪くも)個人的には感じなかったからだ。乳幼児期を殆どカットしたとこはそうっすね、と言っていたので、そうと言われたらそうなのかもしれないが……。(そこは作品の核ではないので)
つまりなにが言いたいのかというと、このバカリズムの回答が嘘か本当かというのはどうでもよくて、「作り手のプロフィールと作品は必ずしも一致しない」というそのことである。が、どうも今流行りの「解釈」や「考察」では主流に取り上げられがちで、たぶんそれはプロモーションインタビューで私生活と作品を絡めた質問が多いからかもな、と思う。受け手の私たちも「そっかーそうなんだー」と深く考えずに享受しがちだし。でも作品を読み解くことってもっと奥深いところ、コアメッセージや時流を元に読み解くことが本来は求められる(というか、文学部の時この辺りを叩き込まれて打ちのめされた)んだよなぁ、と改めて思ったのでした。作家と役者は似て非なるものだけれど、同じ表現者という括りで考えると近しい話なのかもしれないな、と思ってメモしておく。