久々に会ったKはなんにも変わっていなくって、でも、少しだけ話が上手くなっていた。少しだけ服のシルエットが緩くなっていた。挙動は相変わらずおかしくて、でも少しだけジェスチャーの種類が変わっていた。LINEの個人チャットのことを「個ラ」と呼んだ。軽くいじられて私が突っ込むと「ごめんやん!」とおどけてみせた。確実に、人間関係に関して器用になっているのを感じた。
昔のKは、氷の上をそろそろと歩いてくるような話し方をする人だった。私もそうだった。今はお互い思ったことをそこそこ反射的に話している感じがした。お互い、同じようなスピードで、周りに影響を受けて変化をしている。どこまでも同じ歩幅でうんざりする。
なんか、割と何回も、Kが顔を伏せて笑った場面があって、その姿だけが焼き付いているが、何を話してそうなったのかはなんにも覚えていない。惜しいことをした、と思う。Kに関わるすべての記憶を、覚えていたいと思ってしまう癖がある。
あの頃の私が羨ましがっている。でも今の私は、何も知らずに全身で恋をしていたあの頃の私の方が相当羨ましいと思う。