ウェルカム、という対になるものは特にないのだけど、今まで日常に組み込まれてきたものを少しずつ切り離している。
自然に繋がりが弱くなったものもあるし、意識してやめようとしているものもある。長年やり続けたゲームがそうだし、読書がそうだし、ドライブもそうだ。好きだったものが少しずつ遠くなっていく。
父の死を転機にして、自宅が全て自分のものになった。家と納屋と庭。田舎なのでそれなりの規模があるが、生まれてこの方ずっと住んでいる場所だからそれが大きいとも広いとも思っていない。
しかし、だ。実際に自分で維持管理しようとすると手に負えないのだ。一般的な掃除も、庭の木々の手入れも、雑草の除去も、納屋のごみの処分も、建物の管理も、とても一人でやれるものではないとこの数年で痛感している。
父がいた間は暇にまかせて父がしていたが、もはや手助けはない。妻も子も頼りにならないので、自分がやるしかないのだ。
となると、知恵と技術と体力と時間が必要になる。前の二つは学べばいい、体力は分割してやればいい、僕に足らないのは時間だ。
それを捻出するために後回しになったものが、段々と離れているものたちの本質だ。優先順位が低くなったもの、代替の効くもの、なくてもいいもの。
きっと手放す時が来たのだ。
組織からの自動的な卒業のない日々を送るようになって長いが、僕の意志とは関係なくやってくるこの別れは、大きさの違いこそあれ卒業と同じなんだろう。
戻ることはできない。今までと同じ形にはなれない。続くとしても異なるものになる、ならざるを得ない。
それならば仕方ない。この形で、次の所で、また生きていくだけだ。
遠くで生きてくれ、愛する友達よ。会える時が来るのを待とう。楽しみに待とう。