番狂わせ

hikihune
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 諸々の事情により埼玉ではなく東京は大田区に居を構えることとなってしまった。実家の近くで子供を預けながらぼんやり働こうと思い描いていた私にはかなりの打撃である。しかも今度の住まいは会社に近く、夫はフレックス勤務の上週3テレワークという体なので、「僕が子供の送り迎えを担当するから、貴方会社近いしフルタイムで復帰したら」と言われてしまった。ガッデム。現実は冷徹である。はっきり言って長時間勤務よりも長時間通勤のほうがはるかにましなのだが。興味のあることを仕事にして高給を得ている夫には、興味のない仕事をして血反吐を吐いている私の気持ちなどわからないだろう。

 慣れるまでは勘弁してほしい、といったんは拒否してしばらくは時短復帰をすることになっているが、以来フルタイムで復帰。フルタイムで復帰。フルタイムで復帰。が頭の中をぐるぐるとめぐって口の中に苦虫の味が広がっている。

 「フルタイムで復帰する」ということは単に定時まで職場で仕事をするということではない。仕事に全力投球している社員たちと同じ待遇で、平等に、仕事に全力投球するということだ。大事じゃない出張や飲み会ならば、子供が小さいうちはぎりぎり免除してもらえるかもしれないが、割り振られる仕事は復帰前と同じような内容になるだろう。当然残業もある。つまり目標を張られ、企画をし、収益予測を立て、広報と集客を行い、収益を達成し、成果を発表しなければならない。「君の事業が収支プラスにならないとみんなのボーナスに関わるんだよ!?」とかキレられたりしながら目標を追いつつ、さして興味もないが恵まれない場合は著しくプライドを傷つけられる昇進レースを延々走る。

 正直私には社会人としてさしたる能力がないと感じている。無・能である。苛烈な収益志向にも職場内での競争や政治にもうんざりしてきた。労働はある面でやりがいがあるが、おおむね糞だ。さっさとマミートラックに乗って子育てに全力投球しながら規定ぎりぎりまで時短勤務を続け、昇進を停止させて年次を稼ぎつつ、自分なりに仕事のやりがいを追求したい。と私は思っていた。

 その目算が外れつつある。甘ったれたことを考えていた罰でしょうか?だからこんなに傷ついているのですわ。計画通り上手く運ぶわけはない。番狂わせ。

@hikihune
安住の地を探して ここがわたしのインターネットの終着点、そうなったらいいのにな。