半年ほど息子を連れてベビースイミングに通っていたが、職場復帰にあたって京都を離れるので、いよいよ辞めなければならない。人生で一番有意義だったと言って過言でないほどに至福の時間を過ごしたので、あまりにも名残惜しく、切ない気持ちでいる。こんなに愛しているのに離れなければならないとは。そんなことがあっていいのかと思うが、つくづく大人になるというのは、このように愛を諦めていくことなのですわね。
ベビースイミングのよさ。それは水着を着たふよふよの赤ちゃんがたくさんいる温水プールであるということ。赤ちゃんは大体、水をぱちゃぱちゃしたり、おもちゃを借りたりして喜んでいるということ。赤ちゃんを支える母たちも赤ちゃんが嬉しそうなのでみんな嬉しそうということ。先生の掛け声に従って水中を歩き、1・2・3の合図で赤ちゃんを天井に向かって勢いよく持ち上げる。塩素の香りの飛沫が飛び、赤ちゃんの笑みが零れて、室内プールに笑い声が反響する。血生臭い世界から最も遠く、幸福と健康だけがひたすらそこにある。こうしてベビースイミングについて書いているだけで幸せな気分になるし、私の人生の走馬灯に確実に現れてくる1ページだろう。本当に素敵な時間だった。
赤ちゃんが赤ちゃんでいる時間は非常に短い。私が3月でスクールをやめることを告げると、スクール仲間のママ友の皆さんも、保育園入園に伴って教室の曜日を変更したり、学年に従って講座が変わる、と言う。皆都合があって、それぞれである。誰にとっても春は別れ。
でも辞めたくないです、すごく楽しかったから、と心からの嘆を零すと、一人のママが「わかります、平和ですよねえ」と言って慰めてくれた。そう。本当に平和なんですよねえ、ベビースイミング。平和を最も享受できる素晴らしい体験でした。