バイト先で「あ、これ疋田さんだったんだ。」と言われた。朝食の準備を任されたときのことだ。
わたしのバイト先レストランでは、ディナーのお客さまへのサービスが落ち着いた頃に、翌日の朝食の準備をする。その際に、サラダのドレッシングの内容を真鍮の金具で挟み、デーブルに置いている。確かに最初に教わったときは、その金具を二つ使って立てるように言われた。でもある時、別の社員さんが一つだけで立たせているのを見て、なんだ一つでも立つのか。ならば一つで良いな。と判断した。それからは、わたしが準備を担うときは、いつも一つで立てていた。
「疋田さんだったんだ。」とのことだったけど、わたしが編み出した技ではない。けれど、他の人を見習いました、という言葉は聞き流された。わたしの仕業ということで取り急ぎ事態は収められたが、確実にもう一人は同じことをしている。未解決事件では?
どうもこれは、これまでしばしばバイト先で耳にしてきた、公式ルールとマイルールの違いだな、と理解した。全てをマニュアルにしてしまうと、息苦しくて辛くなるから。そう言っていた社員さんがいた。なので、個人個人の裁量で判断していることも多い。わたしもその流儀に従い、気が付いたことは自分の判断で動く。少し慣れてきてからは、自分の意見をそっと述べてみたりもしている。それぞれが良かれと思ったことを行動に移せる職場。創造性を重視している、良いバイト先だと思っている。
ただ、わたしの良かれと他人の良かれは違う。先輩同士の良かれも違う。その日のシフトに合わせて、現場で一番声の大きな人に合わせる器用さを、わたしは持ち合わせている。カメラマンの仕事でもそうだ。依頼主の意向にもグラデーションがある。上司と部下、偉いとされる人と現場の意見の違いを見極め、何かしらに忖度しつつ仕事をする。ただ、翌日以降、現場にいない人が「ちょ。何だよ、これ。」と言っている件に関しては、預かり知らない。
では、このナプキンの畳み方は?このスプーンの置き方は?このグラスの並べ方は?指示を受けて行動する立場としては、どうしてもなことは公式ルールにしてくれ、と思う。マイルールなのであれば、主語を付けて表明してほしい。
先に日記に書いてしまっているが、本人に直接お伝えできる機会がきたら、お話したいと思っている。