迷子のシウマイ

湖上比恋乃
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公開:2024/11/25

家に帰ったら、玄関ドアにシュウマイがぶら下がっていた。コンビニでもらうような袋に入っていて、誰が置いていったのかと探っても、メモ一つ見当たらない。袋にも何も書いていない。困った。しかも崎陽軒である。北海道ではまず手に入らない。横浜にゆかりのある人も、旅行へ行くと聞いた人もいない。心当たりが全くないながらも、あちらこちらへ連絡してみる。

「うちの玄関に、崎陽軒置いていきましたか?」

こんなメッセージを送ったのは初めてだ。しかし、やはりというか誰も彼も「置いてないよ」と言う。

お土産になるような品物であるから、持ってきたなら連絡のひとつでもくれそうなものなのだけれど。本当に、いったい誰が私の玄関にシウマイを置いたのだろう。

実家の両親と家族会議をした結果、箱を開けてみることに。真空パックがおかしくなければ食べてもいいんじゃないか、という判断がくだる。なにより崎陽軒だ。おいしいのがわかっているので、できることなら食べたかった。

外装に、とくに変わったところはない。賞味期限は来年の一月末だ。バリバリと大胆に開封する。取り出してみると、十五個のシウマイがキュッと固まっていた。きちんと真空になっている。

よし、これなら大丈夫だろう。

即席中華スープ(増えるわかめとゴマをお椀に入れて、お湯を注いだあとガラスープの素と中華の素で味付けをしたもの)を作っている間に、電子レンジで温める。

こうして、横浜から迷い込んできたシウマイは、私においしくいただかれた。

そういうわけでもうなくなってしまった以上、今さら誰かが「置き間違いでした!」とやってきても返すことはできない。ごちそうさまでした、と言うことしかできないのである。

@hikono
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