『女性の休日』を見るわたしたちの休日

hinata625141
·
公開:2025/12/16

ひさしぶりに日記を書く。

ここのところ週末といえば子どもがインフルにかかったり説明会に出向いたりしなきゃいけなくて、なかなかゆっくり自分の時間をとることができなかった。たまに自由な一日があっても疲れてて電車に乗る元気がなかったり。

だから今日は楽しみにしてた。寺さんとシネコヤで『女性の休日』を観る日。

シネコヤは初めて行くミニシアターで、最寄りの鵠沼海岸駅にも初めて降りた。

駅のホームの鵠沼海岸駅の看板
シネコヤの看板

シネコヤ、入口からかわいい。昔の喫茶店みたいな雰囲気だな〜と思ってたら昔は写真館だった建物らしい。内装がすばらしくて置いてある本もどれも興味深くて、カフェメニューもあるし、延々と滞在できそう。

素敵なランプ、本棚、奥に古い椅子
映画の本や雑誌でいっぱいの本棚

シアター内もクラシカルなソファ席で個性的!テーブルもあるのでカフェメニューも席まで運んでくれる。近所だったら毎週のように来たくなるような映画館だ。

(↑これはシアター内。席の前にふつうにカフェみたいなサイズのテーブルがある。寺さんはアイスの乗ったフレンチトースト、わたしは大きな葡萄パンを食べました。)

さて『女性の休日』。1975年10月24日、アイスランドにおいて全女性の90%が職場や家庭の役割を放棄し、その存在感を社会に知らしめた記念碑的なストライキを描いたドキュメンタリー映画だ。

今ではジェンダーギャップ指数16年連続一位、ジェンダー平等先進国であるアイスランドだけど、1975年以前の社会は男性優位で家事育児は女の仕事と決めつけているような、70年代当時の日本とそう変わらない状況だった。業を煮やしたいくつもの女性団体が集まって話し合いを重ね、みんなが納得する形でストライキを企画した(ストライキを呼ぶのは保守派の女性たちが反対したので「休日」と呼ぶことになったそう)。広場を埋め尽くす女性たちの姿は圧巻だった。「女性の休日」の成功を機にアイルランドの社会は大きく変わっていった。

これほどの大規模なストライキが成功したのは人口の規模も関係ありそうだなと思う。アイスランドの人口は今の藤沢市と同じくらいだと聞いた。ほとんどの人が辿れば知り合いであるという田舎の人間関係がギリギリ成立してる国だったからこそ、これだけ多くの女性が参加を決断できたのかもしれない。

当時のことを思い出してインタビューに答える女性たちはみな楽しそうに笑っていた。1975年、この運動の中核を担ったのはわたしの母や祖母の世代の女性たちだ。今日のシアターの他のお客さんたちにはその世代の女性が多くて、この映画を見てどう思ったか聞きたかったなと思った。年末に帰省したときにでも母にこの映画の話をしてみようかな。

わたしたちが見た回は、東京大学でアイルランドの古い言語や女性の社会運動を研究しているという山田慎太郎さんのゲストトーク付きだった。山田さんは高校生の時にアイスランドに留学した経験が今の研究に繋がったそうで、昨年は現地で50周年の「女性の休日」にも参加されたそう。写真や地図も交えて当日の様子をお話ししてくれて、とてもおもしろかった。

山田さんはアイスランドのお母さん(ホストマザー?)のご友人が編まれたというカーディガンを着てらして、もう10年くらい着ていて毛玉もあるしこんな場所に着てくるのはふさわしくないかもしれないけど、この模様もオリジナルで世界に一つだけのもので……とそのカーディガンを紹介されてて、そのエピソードのすべてが素敵できゅんとした。

山田さんによると、それでもまだ賃金格差があったり金融など業界によっては今もトップは男性ばかりだったりと格差はあるとのことだけど、国会議員の48%は女性、今の大統領も首相もレイキャベク市長も女性だそうで政治的な平等はかなり達成されてる。日本が追いつける日は来るんだろうか。他人事ではないので自分たちが頑張るしかないのだけど。しかしなぜ差別されてるほうが頑張らなければならないのだと理不尽さにため息のひとつくらい出る。

アイスランド映画といえばもうすぐこのシネコヤでも公開されるらしい『主婦の学校』というドキュメンタリー映画を配信で見たことがある。もともとは花嫁修業的な学校だったのが、今は自分で自分の面倒を見るための、そして無駄な消費を抑えて既存のモノを大切にするエコロジカルな生活を男女も世代も問わず学ぶ場となっているそう。

日本は義務教育の中で最低限の調理と裁縫を教えるのはけっこう良いことなんだなぁとこの映画を見て思ったことを思い出した。そういう教育がない国もあると思うので。高校や大学でも必須科目としてあってくれていいくらいだよね。

外から見たディスプレイ。抗議活動に使われた人形に似せた人形?など

(↑映画にちなんだディスプレイも素敵!)

映画館を出ると雨がやんで湿度が下がったせいか、ぐっと空気が冷えている。映画の中で「どんな運動にも闘争の歌がある」というセリフがあったけど日本にはないよねぇなんて話しながらこじんまりとした商店街を歩き、海岸に出た。

浜辺の写真

重たい雲空にグレイの海。だけど波が良いのかサーフィンしてる人たちがめちゃめちゃ多い。ビーチバレーしてる人も結構いる。みんな元気だなぁ。こんなに寒いのに。やはり湘南は陽キャの街。ハンバーガー屋ばっかりだし。坂口憲二は永遠の湘南顔とか、干した洗濯物は潮風でベタつくのか否かとか、ここ『真夏のシンデレラ』に出てきた気がする〜などと話しながら海岸沿いの歩道を江の島に向かって歩いた。

江の島から江ノ電に乗った。車窓から見る海にはやっぱりサーフィンをしている人達が多い。スラムダンクの例の踏切のところではたくさんの人たちがこっちに向けてスマホで撮影してた。そうだ『スロウトレイン』も鎌倉だったよねぇ、もう一度見たいねぇなどと話しながら電車に揺られ、降りたのは……

駅の外観

そうです、極楽寺駅です。わたしも寺さんも『最後から二番目の恋』が好きなのだ。そして『海街diary』のロケ地でもある。あとから思い出したけど『スロウトレイン』のロケ地でもあった。桜も紫陽花も紅葉もないどんよりとした天気の日だったけど、私たち以外にもそれなりに観光客がいて、みんな駅で写真撮っている。

無人改札機

(↑ちあきさんがいつも出られない改札)

極楽寺駅から隣の長谷駅まで歩く。背の高い木が並ぶ坂道を歩いてると山の中にいるようで、さっきまで海のそばに歩いてたのが不思議な感じ。かと思えばウェットスーツを着てサーフボードを持った人とすれ違う。そういえば加瀬亮はそんなに湘南のイメージないのに『最後から〜』も『海街』も両方出てるんだよねと話したり、寺さんの職場の話を聞いたり。

会話ってあとから振り返るともっとくわしく話したかったなとか、相手の話ももうちょっと詳しく聞きたかったなと思うんだけど、会話してる最中はしゃべる・聞く・考えるのすべてが同時進行なせいかどうにも追いつかない。わたしは基本ずっと在宅勤務で人と話すことが少ないから会話の機能が衰えてるのかもしれない。いやだなぁ。鍛えたい。

極楽寺駅と長谷駅の間くらいにある御霊神社にも寄る。ここも『最後から二番目の恋』のロケ地だそうだけど、どんなタイミングで出てきたのかいまいちピンとこない。境内は写真禁止だったので撮れなかったけど、御神木のような大きな大きな銀杏の木が何本もあって、神社の背面は山だったので紅葉の季節はとても美しいだろうなと思った。住宅地の中の小さな神社をロケ地巡りの一環で訪れていることに若干の申し訳なさを感じながらあとにする。

神社前にある踏切から見た江ノ電の線路

↑神社前にある踏切から見た江ノ電の線路

そこからまたしばらく歩いて長谷駅。駅のスタンプコーナーを見つけた寺さんがそそくさと近寄ってノートを広げてスタンプを押してる。もう二冊目なのだと言う個人的なログを書き記したノートをぱらぱらと見せてもらったら、めちゃめちゃ素敵!ノートとか手帳をセンスよくまとめられる人、あこがれる。

わたしはそもそも字がへただし、ノートをつくるようなコツコツとした手作業も苦手だ。でも見返したら絶対たのしいよね。来年は頑張ってやってみようかな。ノートはすぐ買っちゃうから無駄にたくさんあるし!

さて鎌倉駅。夕方4時くらい。前に鎌倉来たときにふらりと入ってびっくりした書店、たらば書房さんに寄る。一見ふつーの駅前の本屋って感じなんだけど(実際お店は狭い)、奥に入れば入るほど品揃え、選書の良さにびっくりする。岩波新書が恐ろしいほどあったりする。さすが文豪の街。

気になってたけど最寄りの本屋に入荷がなかった金承福『本を作るのも楽しいですが、売るのはもっと楽しいです。』をパラパラと立ち読みして購入した。

時刻は4時。中途半端な時間だけど二人ともまぁお腹が空いてた。さむいのであったまるものが食べたいねえと言いながらお店を探す。鎌倉駅から鶴岡八幡宮まで行く目抜き通りからちょっと裏道に入ったところで見つけた、坦々鍋がある居酒屋に入った。6時まではハッピーアワーですという言葉に惹かれたのだけど、そもそも入った時間が早かったので最後までハッピーアワーの値段で済んでしまった。よく歩いたのでビールがおいしい。

串焼きとしらすおろしの写真

肝心の坦々鍋の写真を撮り忘れてる(!)のだけど、とってもおいしかった。唐辛子を追加で入れてもらって、最後はうどんでしめた。

漫画や俳優やドラマや映画の話の合間に政治の話にもなる。一緒に見た『女性の休日』で女性たちがアイルランド初の女性大統領誕生にどれだけ喜んだかというシーンを思い出し、本来なら日本でも初の女性首相を喜びたかったよねえ、それどころか日本お得意の〝何も進んでないのにバックラッシュ〟ばかりでつらいという話などもした。おすすめの漫画をいくつか教えてもらったりもした。

お店を出たらまだ6時半くらいだったけどすっかり暗くて吐く息が白かった。

寺さんとは電車の中で別れた。わたしはさらに一時間電車に揺られる。さて買った本を読もうか、持ってきた図書館の本を読もうか。……次にハッと顔を上げたら最寄り駅に停車してたので慌てて電車から降りた。完全に寝てた。最寄り駅で起きたの奇跡。千葉まで運ばれるところだった。

ようやく家に帰ってアプリを見たら13580歩!

初めての映画館に行って良い映画を見て、海を見て好きなドラマのロケ地を見て、たくさん喋ってたくさん歩いて、最後はおいしいものも食べた。そんな大満足の休日でした。寺さんありがとう〜🫶

@hinata625141
感想文置き場。たまに日記。