最近日記を書いてないので、夏の記録のようなものをまとめておきたい。まずは読書編。
①BUTTTER(柚木麻子)
再読。この半年くらいでドイツやイギリス、アメリカなどの書店で山積みになってるポストを散見したのだけど、これ欧米で売れる要素あるっけ?と気になっての再読。この作品で描かれる女性の抑圧(痩せろ、とにかく痩せろ、料理しろ)ってものすごくドメスティックなものだと思うから、欧米の人が読んでわかる…?ジャパンこえーってかんじ…?😂
今読むととくに終盤は他者へのケア精神であったり疑似家族的なユートピアが描かれていて、それってまさに今2024年に注目されているテーマなので(本書の発売は2017年)、さすが柚月先生先見の明がある!と思う一方で、例えば疲れた誰かが羽を休めるような場所を確保するような、経済的強者じゃないとできないケアにも限界をかんじる2024年…
②高慢と偏見(ジェイン・オースティン)
これはこれで詳細な感想を書こうと思ってたけど、バタバタして読書を中断してたうえに再開したらほぼ一気に読み切ったので感想が追いつかなかった…。映像化されたり翻案された作品も多いけど、やっぱり原作が一番面白いよ。地の文がほんと笑える。
再読したいと思ったのは小川公代さんの『翔ぶ女たち』でも本作品への言及があったからだ。主人公であるエリザベスはアルファタイプであり、積極性に欠ける姉のジェインはベータタイプであると。でも今回読んで、本作にはいろんな女性が出てくるけどそのほとんどはアルファタイプだなと思った。恋愛結婚と上昇婚のどちらをも成就させたエリザベスはもちろん、経済的な安定を求めて恋愛感情抜きに結婚相手を決めたシャーロット、ダメ男と駆け落ちしちゃうリディアなど、いろんなタイプの我の強い女たちがたくさん出てくるのが楽しい。
『高慢と偏見』では年収とか遺産相続の話がけっこうリアルに書かれている。女性が自由に生きられないのは経済的な女性差別があるからだとオースティンは身にしみてわかっていたからだろう。ラブコメではあるけど社会的な視座がちゃんとあるところがいいなと思う。
③傲慢と善良(辻村深月)
こちらも『翔ぶ女たち』から。というか『高慢と偏見』の話もこの『傲慢と善良』の項で出てきたのだった。こちらは初読みです。
本作も結婚観や現代社会における女性の受ける抑圧を描いた作品で、タイトルからもわかるとおり『高慢と偏見』を意識した作品。
『高慢と偏見』ではジェインよりエリザベスを、『若草物語』ではメグよりジョーを、『赤毛のアン』ではダイアナよりアンを。女の子の物語は昔からずっと、家庭の天使より職業婦人、アルファタイプのヒロインとともにあった。
だけど本作のヒロインは小川さんが指摘した通り、ベータタイプのおとなしい女性だ。そういうキャラクターは既存の物語では脇役でしかなかった。実際、主体性の薄いキャラクターの物語はカタルシスがなく読んでいてもなんだかうつうつとしてしまう。だけど自分より周囲の人を優先してしまうのは持って生まれた気質のようなもので、自分ではどうしようもないことなのかもしれない。そしてそういう女の子がジェンダーバイアスの強い家庭に育った場合、さらに主体性を持つことを徹底的に阻害され、環境から抜け出すことが困難になってしまう。
〈結婚〉のために自分や相手の価値を推し量る「傲慢」、そして〈結婚〉をベースとした社会のありようを疑いなく信じる「善良」。『あのこは貴族』とも繋がる物語だなと思ったし、一度は完全に壊れてしまった関係性の再構築に希望を感じる物語でもあった。
わたし自身は我のつよい女なので共感はしなかったけど、この物語を読んでやっと自分の物語と出会えたと思った人もいたんじゃないかと思う。と同時に、自分は誰かに役割を押し付けていないか、おとなしい人を侮ってはいないだろうかとも考えさせられた。
④赤朽葉家の伝説(桜庭一樹)
実家の本棚にあったのでなんとなく再読。女三代記だけどエンタメ度が高くて読みやすい。すごく田舎の話ではあるけれど、戦後から現代にいたるまでの日本社会の空気の変化が追体験できるのもおもしろい。
学生時代はレディース総長で引退後は少女漫画家として大ヒット作を産む二代目の毛鞠がめちゃめちゃ下妻物語の亜樹実さんぽくて大好き😂
⑤言霊の幸う国で(李琴美)
これは別に感想書いたけどまだ非公開にしてて、そのうち公開したらリンク貼ろうかな。
本作はとにかく圧倒的な記録文学なんだけど、そのなかにある仕掛けがある。それによって、あなたはトランスジェンダーなのか、そうではないのか、その証明をせよという野蛮性がむき出しになる。本当に今読むべき作品だなと思った。
⑥幼年の庭(呉貞姫 訳/清水知佐子)
緊張感が高くうつくしい言葉で語られるやるせない現実に引き込まれる。死の気配のする話が多かったので、お盆時期に読むのにも合ってた。こんな文学が好き。何度でも立ち返りたい。