朝起きて、谷川俊太郎さんが亡くなったことを知った。とくべつに好き、と言えるほどには読んでないけれど、この国では谷川さんの言葉に触れずに生きるのはむずかしい。教科書にかならず載ってるし、うちの子の校歌の作詞もなんと、谷川さんだ。書店の詩のコーナーでいちばん並んでいるのも谷川さんのお名前。そのくらい、日常のなかにある。
わたしは親子二代で『もこ もこもこ』という絵本にお世話になった。自分が子どもだったときのことは覚えてないけれど、親として子に読んであげると、意味もわからないのに、まだ言葉も理解してない子どもの食いつきがとてもいい。わたしが出会ったなかでいちばん不思議な絵本だと思う。
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『あたしとあなた』谷川俊太郎
もう絵本は読まなくなった子どもを送り出してから、本棚からこの詩集を出して読んだ。この本、めっちゃ装丁が素敵なんですよ。ジャケ買いです。カバーは布地で箔押しで、かつ、なんと本文用紙はこの本専用につくられた紙(しかも2種類!)だそう。贅沢〜!!!
ぱらぱらと読みながらある一編の詩に目が止まった。そしてふふっとわらってしまった。
「朝」
朝
目が覚めたら
あたしが
死んでいた
あなたは
郊外の
動物園で
虎を
見ています
死後の
青空は
生前の
青空より
深みが
あるのです
あなたは
このあと
買い物ですね
あたしは
神を
探しに行く
迷子に
ならないように
わらってしまったのは、ぶらぶらと歩きながら神を探している谷川さんが目に浮かんでしまったから。
亡くなっても言葉は残る。その言葉を紡いだ人の姿も残像のように残り続ける。言葉は生と死の境界線をすこし淡くするものなのかもしれないな、なんてことを思った。
朝はよく晴れていて良かった。死後の青空は深みがありますか?