第16週『女やもめに花が咲く?』
(男やもめに蛆がわき、女やもめに花が咲く)妻を失った男の身の回りは、家事に手が回らず不潔になるが、それに比べて女やもめは、夫のめんどうを見なくてもよく、その分だけ身奇麗になり、周りの男も放っておかないからうわさも立って華やかになることをいう。
男も女もセルフケア大事!
さて新潟編突入〜!キャストもガラッと変わってなんだか新鮮。少し風通しが良くなったな〜なんてことを思うほどには先週までが結構しんどかったです。なんかあっちもこっちも煮詰まってた感じ? でもまだまだ心許ない新潟編の最初の一週間が終わって、感想のため月曜の回を改めて見たら、竹もとでお団子食べながらおじさんトリオに励まされてるその落差に、わー!寅子の後ろ盾分厚っ!!っと改めて司法省における彼女の特権性が垣間見えて、このタイミングでの転勤はほんとよかったなぁと思うなどしました。
あとロケが多いのもいい!朝ドラって中盤以降ほんとセットが多なるんだけど、どうしてもそれが閉そく感を感じさせると前から思っていて。だからとらつばの中盤で新潟の豊かな自然と、ばーっとひらけた景色が見られるのがとてもうれしい。
新潟見三条市、思ってたより町の規模は小さめかな?判事も寅子しかいないし、弁護士はふたりしかいない。しかも兄弟!
田舎描写上手いなぁと思ったのは、高瀬に森口が「おめさん高瀬のところのせがれらか。あいかわらずしょっきがねえなあ。きちんとまんまくってっか?」と話しかけるところ。まじで田舎はこれ。昔からのつながりが少なからず仕事にまで影響するところ。森口の言葉は悪気がないように見せかけてふつーにマウントだ。田舎はほんとに親を知ってるとか、辿っていけば知り合い、みたいなことがあるんですよね〜。わたしの地元はここより大きめの人口規模だと思うけど、それでも父の友人が高校の担任とか全然あった。
やっぱりそういう人のつながりがあることが良し悪しであって、つながりがあるからこそ助かることもあれば耐えられないと思うときもある。「家族のためにしっかりしなきゃ〜」とか「結婚は?子どもは?」とかプライベートなことを、「つながりのある人」だから、と気安く言ってしまう人は今もいるくらいだから昔はもっと多かっただろうと思う。
そんな無神経な人がそんなふうにズケズケと心に踏み込んできたら、そんな手つきで大事な家族の死に触れたら、それでも愛想笑いで流さなきゃいけないんだろうか?「いい大人だから」乗り越えなきゃいけないんだろうか?
「死を知るのと受け入れるのは違う。事実に蓋をしなければ生きていけない人もいます」という航一の言葉に寅子は自分自身を重ねる。今も胸が詰まって、優未に優三のことをうまく話せない自分のことを。航一の言葉もまた、妻を失った自分の経験に裏打ちされたものだったのだろう。大切な人の死をどう受け入れるかは本当に人それぞれだし、どんなタイミングでも慎重にすべき話題だなと胸に刻みたいエピソードだった。
また、高瀬の兄への思いは透明化されているきょうだいの悲しみに光を当ててくれていると感じた。子を失った、パートナーを失った、その悲劇の前できょうだいの悲しみはあまり描かれてこなかったのではないかと思う。もちろん関係性はそれぞれだけど、高瀬のように深い哀しみを持ち続けている人もいるのだと描いてくれてよかった。
そんな高瀬の暴行を適正に処分することで、「心にできたカサブタを事あるごとに悪気なく剥がしていくような人たち」に借りを作らせないよう高瀬を守った寅子。
自分の意志で物事を受け流すのと受け流さざるをえないのとは違うから。したいようにできるように。怒りたい時に怒ることができるように
なにが人をスンっとさせるのか、考え続けてきた寅子だから言えた言葉にぐっと来る。また、これまでもそうだったのだけど、こんな大事な話を伝えるとき、話してる側(寅子)ではなくそれを受け取っている側(高瀬)の表情をつぶさに捉えるのもとらつばらしいシーンだった。
それにしても寅子はこれまでガラスの天井に向かってガンガン槍を突き上げる役割だったのが、ここへきて小さな裁判所ながら組織のトップに立つ。どうやって部下を率いていくか、どうやって組織を守るのか。一歩踏み間違えれば名誉男性化してしまう寅子の綱渡りの日々が始まったのがまた面白い。
裁判所内、弁護士兄弟はこれからもまだひともんちゃくありそうだし、事務員さんもなにか言いたげではあるけれど、とりあえず高瀬とは良い信頼関係築けそうでよかったな〜!
さて、寅子と優未のぎくしゃく母子関係。
なかなかスンっが抜けない優未だけど、テストの点数を見せ、緊張するとおなかが痛くなることを打ち明ける。「お父さんに似ちゃったか」と笑う寅子にもっと話が聞きたいとせがむ優未だが、寅子はうまく話せない。だけどそれからしばらくして高瀬がくれたキャラメルを夜中に分け合いながら、優三の話の続きを優未に話すことができた。「おいしいものはふたりで」、それから変顔。寅子と優三をぎゅっとつないでいたものが、今度は離れかけていた寅子と優未を結んでくれる。こんなん泣いちゃうよ😭
一度できた溝はそう簡単には埋まらない。でも、それでも。
こじれた人間関係において安易な解決に飛びつかない、このドラマの誠実さが好きだなと改めて思う。
あとやっぱりふたりで新潟に来たのは良かった。ふたりしかいないから、互いに向き合わざるをえない。優未もたしかに東京時代と比べると一人だと寂しそうというのもあるけれど、子どもは一人で考える時間もけっこう大事なんじゃないかと思う。それに寅子の働いている姿、夜中にたたき起こされて対応する背中を見せていることも良い影響がありそう。
来週の予告ではちょっと楽しそうだったし、これからは優未も寅子も笑っている姿をたくさん見られるといいな!
それはそうと、星航一問題ですよ。
劇中の時間はわからないけど、新潟編一週間で3回も来てるし寅子も「よく来ますね」って言うからほんとそうだよなって笑ってたら、その返しが「心配性なもので」だったので笑いが引っ込みました。えっなに…心配性……?僕はあなたを心配してますってコト……???
そのあと兄弟弁護士ズに便宜供与的なことをほのめかされるもきっぱりやり返す寅子を見てほんのり満足そうな航一……美味いコーヒーとハヤシライスを出す喫茶店を紹介できると言い出す航一……それに対して「あら!誘ってくださるの?うれしいわ〜!」と喜ぶ寅子が無邪気すぎて気まずそうな航一……航一〜〜〜!!!
寅子の対応もね、なんか思い出すなぁと思ったら、よねさんがちょいデレたときの寅子とまったく同じなんですよね。なんかやりにくいなぁと思ってた人の扉がちょっと開いたのが見えた瞬間、大喜びで飛びつく寅子。うん…まだぜんぜんラブじゃないね……
男と女だからってすぐにラブに結びつけるの乱暴!ラブイデオロギー強すぎ!というのが吉田脚本作含め昨今の良質なドラマで度々描かれることだし、それは本当に正しいんだけど、それはそれとして、ドラマにラブを求める気持ちも正直あります😂
とらつばはこれまでラブ展開が薄めで、寅子自身があんまり恋愛にピンとこないタイプであるとしても、花岡から寅子への気持ちの描写も少なかったし、優三さんにいたってはもとより家族的な愛だったし、見ててソワソワするような恋愛はまだ描かれてないんですよね。
そしてそういうのを描かなくてもこのとらつばという朝ドラの価値が何ら損なわれることはない!ということはもうこの4ヶ月視聴してきて自信を持って言えます!言い切れます!が、…………ここへきて登場した星航一のポテンシャルがひじょ〜に高い😂😂
星航一の投げるボール(常に変化球)に寅子がいっっっさい気付かないという展開が二週間ほど続いたらわたしが大変喜びますが、ま、二週間は長いかな😂 でも一日でも長く互いに「ん?」「ん?」となってるのを見たいです。
過去に寅子はアセクシャルなんじゃないか、デミロマンティックなんじゃないか、という朝ドラ受容に、当時そういう言葉も概念もなかったけれどそういう人はいた、という描写なら、すごく良いなと思ったしそういう感想も書いたのに、ここへきて星航一にラブイデオロギー爆発させてほんとごめんなさいなのだけど、これまでのラブイデオロギーを解体しつつもそれぞれの多様なラブを描くというのがとらつばなのかな〜と思っているので、この問題もどうかうまく着陸してくれることを祈ってます!
そしてここへきてついに……涼子様でした。女子部最後の行方不明者、ついに。店の名前をよねがいた店にちなんで付けてくれただろうこと、そして玉ちゃんも今も一緒なことがわかったのは、いやなにより、ふたりとも生きててくれたころがほんとうによかったよー😭
まだこれからいろいろあるとは思うけど、とりあえず女子部も玉ちゃんも花江もみんないるのはわかったから、いつか全員集合してくれる日を待ってるよ…😭😭😭
第15週シナリオふりかえり
ちょっと今週は細かく指摘できないんですけど、全体的にシナリオにある寅子の調子乗りシーンがドラマではかなりトーンダウンしてたことに驚いた。わたしはけっこう、寅子謝らせられるのちょっと理不尽では?と先週思ってたのだけど、もしシナリオ通りだったらもうちょっと花江側の気持ちに寄り添えたかもしれない。
こういうトーンダウンはいわゆるヘイトコントロールの類だと思うんだけど(確かに寅子へのヘイトがけっこう集まってた時期だし)、ただ穂高先生のときもそうだったのだけど、誰かの怒りの原因となる言動をトーンダウンさせてしまうと、例えば穂高への寅子の怒り、寅子への家族の怒りが、なぜそんなに怒ってるのかが視聴者に伝わりにくい問題も発生してしまうんだなぁとそのむずかしさを感じた。
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