朝ドラ『虎に翼』がおもしろい〜!
期待してたけど期待以上の内容に、放送開始三日目にして夢中です。朝ドラはなんだかんだ10年くらいは見てるんですけど(途中で脱落するのも多い)、こんなに始まってすぐ面白いってなかなかない気がします。テーマはガチでフェミニズムだなと思うのだけど、全体的に明るくてコミカルで見やすい。なにより自分自身が納得できないことは納得できないと素直に口に出してしまうトラコを演じるのが伊藤沙莉さんということもあって、不思議と小賢しさを感じることなく視聴者に愛される気がします(個人的には小賢しくてなにが悪いんじゃいという気持ちですが)。
ちなみに第1週のタイトルは「女賢しくて牛売り損なう?」(女が利口なようすをしてでしゃばると、かえってその浅知恵を見すかされて物事をやりそこなうことのたとえ)です😂
初回はモンペ姿で河原に座る猪爪寅子が新聞を広げ、交付された新憲法の第十四条を見つめて涙するシーンから始まる。
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
今日は「みみより!解説「虎に翼」解説 三淵嘉子と“男女平等”」というミニ番組をNHK+で見ました。先日の石垣りんのときも思ったんですが、こういうときにすぐご本人のインタビュー映像や音声がすっと出てくるのがさすがNHK。
ラジオ番組で三淵嘉子さんはこの新憲法を初めて読んだときの感激を振り返ってこう語っている。
私の一生の中で一番素晴らしい瞬間でしたね。男女平等だって言われたときに。だから本当に憲法が女性のためだけじゃない、人間が平等になったなんてということは、今の方にはわからないと思う。本当に平等じゃなかったんですもの。だからあれだけでも本当に憲法というのは日本の社会を新しい人間らしい社会にした大きな力だったと思いますね
このインタビューを聞いてあっと思い出したのでこちらを引っ張り出してきた。
ベアテ・シロタさんはウクライナ系でヨーロッパと日本で育ち、終戦の年にアメリカで国籍を取得した女性で、GHQのスタッフとして日本国憲法の、人権や女性についての項目で草案を作った人でもある。
改めて調べてみたらドラマの初回に出てくる法の下の平等をうたった第十四条もまたベアテさんの草案だった。
ベアテさんは著名なピアニストであった父について5歳半からアメリカンスクールを卒業する15歳まで日本に住んでおり、日本語は堪能で日本のことをよく知っていた、アメリカにとっては稀有な人材だった。
民政局で憲法草案に携わったスタッフには女性は四人しかおらず、しかも日本政府との大詰めの協議の場には女性はベアテさん一人だったという(そのベアテさんも通訳として呼ばれていた)。あらためて、政治的な場に女性がいることの大切さというか必要性を痛感するし、そのうえでそこにいたのがベアテさんでよかったなぁと思う。
ベアテは幼い少女から高齢の女性まで、あまりに多くの女性が、夫や父や息子や親戚の男性に完全に服従し、彼らの後ろを歩いてきたのを見てきており、このような状況を変えるために自分にできることがあればやりたいと決意していた。
ベアテさん自身もまた、アメリカで記者として働きたくてTIME誌に入ったものの、当時女性はリサーチアシスタントしかやらせてもらえなかったそう。そのとき培ったリサーチ力が憲法草案にも役に立ったが、女性だからアシスタント、と役割が決められていた経験も彼女に影響を与えただろうと思う。
当時ベアテさんは22歳で法律の専門家でもなかったことから、彼女が草案に関わっていた事実は90年代なかばまで明かされなかった。もし三淵さんがその事実を知ったらどう思っただろう。その草案を作ったのが女性だと知ったら。対談とかしてほしかったな〜なんてことを思う(三淵さんは84年に亡くなってる)。
そういえばなぜわたしがこの本を読んだかといえば、去年行った柚木麻子さんの講演会で柚木さんが(なんの話の脈絡かは忘れたのだけど)、女性差別を撤廃した憲法作成に携わったベアテさんが徹子の部屋に出た伝説の回があるのでYouTubeかなにかで見てください、って話されてたんですよね。(YouTubeにはなかったけど検索したらフルで見られます)
というかこんな貴重なアーカイブは公式が公開してほしい。ほんとに歴史的価値のある回なので。もちろん憲法草案についてのお話もあった。またお二人には父親がプロの演奏家で戦時中に弾圧された経験があるという共通点もある。ちなみにお二人は初対面ではなく、戦後はアメリカのジャパン・ソサエティで両国のアートの橋渡しとして働いていたベアテさんの招待で黒柳さんがNYで漫談を披露したこともあったそう。そんなお話も聞けてよかった。平和と芸術を愛したお二人の楽しいおしゃべり。
三淵さん、ベアテさん、黒柳さんとそれぞれ10歳ずつくらい年が違うんですよね。だけど確実に同じ時代の東京の空気を吸っていた女性たちなんだなぁとしみじみしました。
『虎に翼』でこの時代の女性の生き方とその変化がどう描かれるのか、ほんとうに楽しみです!