『フライド・グリーントマト』をつくって、たべて、みた

hinata625141
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公開:2024/11/2

『フライド・グリーントマト』はアメリカのフェミニズム映画としてちょくちょく名前を聞く作品で、相互さんにおすすめされたり、大好きな漫画『違国日記』にも登場したりしてて、ずっと見たいな〜と思ってた映画です。だけどいつの間にか近場のレンタル店はぜんぶなくなっちゃったし、ソフトも廃盤だし、配信もなくて、なかなかこれまで機会に恵まれなかった。

今回、本を作るにあたって友情をテーマにした映画をリストアップしていて、あぁそういえば『フライド・グリーントマト』も女性の友情ものなのに見られてないんだよなぁと久々に検索したら……U-NEXTに!?しかも10/31配信終了!??誰か教えてよ〜(無茶言うな)とあわててマイリストに入れました。いやでもほんとに、作品名登録してどこかで配信が始まったらお知らせしてくれるサービス需要あると思うな〜

さて『フライド・グリーントマト』、日本公開が1992年。第一の物語の舞台は70年代のアラバマで、キャシー・ベイツ演じるエヴリンが叔母の見舞いに訪れた老人ホームで出会った老女ニニーの話す物語に引き込まれます。そして第二の物語がニニーの話す過去、20年代から始まる二人の女性、イジーとルースの物語です。まあなんやかんやあって、ふたりは駅の近くでカフェを開くのですが、その名物料理がこのフライド・グリーントマトです。

フライド・グリーントマトについて検索したらヒットした柚木麻子さんのコラム。すでにチャレンジ済み…!さすがです。

このコラムの中でも語られている通り、日本のスーパーではまず緑色のうれてないトマトを見ることがまずないですよね。このコラムを読んで、食べてみたいけどまあ無理だよね〜と思ったのが今週の火曜日。その2日後の昨日、わたしは行きつけの八百屋で緑のトマトに出会ってしまったのです。運命?……というよりもなにか義務感のようなものを感じてその緑のトマトを買ってしまいました。

昨日はもうメニューが決まってたのでとりあえず野菜置き場にそのトマトを置いておいたのですが、翌日見たらもう赤くなり始めてる…!追熟か!!そんなトラップが!!

というわけで慌てて今日作りました。うん、フライ、めんどくさいね…。トマトだけだと確実に卵液があまりそうだったので柚木先生のページにあったちくわチーズも一緒につくって揚げました。明日息子が弁当必要なのでちょうどいい。

生のトマトから出来上がりまで

実食!うん!おいしい〜!軽く火の通ったトマトは甘くジューシーで、パテなしでもこのままレタスとパンに挟んで食べるのでも良さそう。ケチャップやチリソースをかけても…と書いてあったけど下味の塩だけで十分おいしかったです!

でもやっぱりもっと固いトマトがよかったんだろうなと思う。火が入るとどうしても崩れやすくなってしまう。わたしもちょっと火を入れすぎたのかな。衣が薄く色づくくらいで引き上げたほうがよかったかもしれない。

というわけでフライド・グリーントマト、もし青いトマトを見かけて、かつその夜にフライを作る心の余裕があるときにはぜひ試してみてください!

さて映画のほうですが、家庭内暴力夫から逃げて女二人で生きていくことは時代背景(20世紀前半)、土地柄(ガチ南部)を思えばとてもとても難しかっただろうに、それをやり遂げたイジーとルースは格好良かった。カフェのキッチンで笑いながら互いの顔に食べ物ぶつけ合って喧嘩してるシーンが大好きです。そこにさらにミステリー的な要素も絡まって、時代を経て70年代にそれを聞くキャシー・ベイツが夢中になるのも当然!そんなキャシー・ベイツも自分の興味を示さない夫に嫌気が差し、女性のためのセミナーとかに行ってもピンとこなかったのに(アメリカは第二波フェミニズムの時代です)、ニニーから聞くイジーとルースの話にたくさんの勇気をもらって自分自身の幸せのために変わっていく。家の壁を自力で壊してるところとか最高です(笑)!女性同士のエンパワメントとしてもすばらしいし、「物語の力」を感じさせるのもよかったなと思います。

一方、今見ると黒人描写に問題があるかな〜とも思いました。当時のアラバマの人種差別はしっかり描かれるしそれこそKKKとか出てくるのですが、イジーたちの一番近くにいる使用人の黒人たちがあまりに都合良く描かれています。まあ30年以上前の作品ですし(1991年公開)、今ならこういう描写はありえないとそう感じるということは社会がアップデートしてるということでもあると思います。

あとイジー→ルースは絶対恋愛感情だよなぁと思ったのですがそこはちょっと曖昧なままでした。ちょっと検索すると原作ではしっかり同性愛として描かれていたようです。そこをぼかしてしまったのもやっぱり時代かなぁと。日本でもよしながふみの『アンティーク 〜西洋骨董洋菓子店〜』から同性愛描写を抜いてドラマ化されたのは2001年でした。

それでも、男と結婚しなくてもいい、女一人で生きてもいいし女二人で生きてもいい、それは当事者が選ぶことであると、そんなメッセージを与えてくれる映画でした。だからこそ『違国日記』では、異性と結婚することが当然とされる風潮に疑問をもつみのりに槙生さんがこのソフトを貸したのだと思います。逆にみのりのセクシャリティが槙生にはわからないからこそ、セクシャリティの問題はぼかしたまま女が結婚せずに生きることを選択するというこの映画が一番よかったのかもしれないな…とも思いました。

「そういうものだから」という世の中の風潮や社会規範から解き放たれる物語が、もっともっと増えるといいなと思います。

@hinata625141
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