4月19日。まだ四月だけど五月晴れと言いたくなるような、よく晴れた日曜日。日向を歩いていると暑いくらいだ。この日に国会前で開催されたデモはずいぶん風変わりだった。いろんな人がいるし、いろんな人がいていい。そんな自由さがあった。
リズム隊とともにじゃかじゃかしたい人、自作のノボリをアピールしながらのんびりしたい人、盆踊りしたい人、スピーチを聴いてコールしたい人、デカフラッグを振り回す人、ピクニックしたい人、写真は撮られたくない人、大音量のプロテストレイヴで盛り上がりたい人。それぞれがゆるく集まり、同じものが好きな人たちが集まるがゆえに生まれるセイフスペースがあちらこちらに自然発生していた。さながら文化祭やフェス、地域のお祭のようだった。
ただ来てお菓子食べてるんだけでもいいよ、好きなことしながら座ってるんでもいいよ、という「ゆるさ」のアピールこそが今回のデモの一番の良さだったんじゃないかなぁと振り返って思う。
デモでこんな雰囲気を実現できるのは、今はこれだけの広いスペースを使える国会前(休日の日中という条件下のみ)だけかもしれない。だけど、なんか楽しそうだな、あぁこんな感じでゆるく参加していいんだ、そんな景色を発信することはデモの裾野を広げるだろうし、地方のデモへの応援にもなるんじゃないかと思う。
先日、『わたしたちの自由について』というドキュメンタリー映画を見た。2016年の安倍政権下における安保関連法への反対デモを主導したSEALDsの活動を追った記録映画だ。怒りと切迫感を帯びた彼らのコールは国会前を最高で12万人の人で溢れさせた。それは今見ても圧巻の光景だった。
だけどそれから十年経って、彼らのようなコールは当時ほど人を、とくに若い人を呼ばないのではないかという気もしている。「怒り」という感情への忌避感が年々強くなっているのを肌で感じるからだ。怒ることは大事だと先日の『虎に翼』スピンオフでも教えられたし、今のデモだって根本にあるのは当然政治への怒りだ。それでも「怒り」の感情をむりに出力しなくてもいい、ただそこに立っているだけでいいし、好きなことしてていいし、座ってもいいよ、というのがとても今っぽいなと感じる。
わたしもコールに少し参加したあと、歩き疲れたのでピクニックゾーンでレジャーシートを敷いて少し読書をした。もっとそれっぽい本を持ってくればよかったかなと思いつつ、ふつうに読みかけの『マークスの山』を読んだ。すぐ近くに右翼の街宣車がしばらく滞在していてうるさくてあまり集中できなかったけど、木陰は涼しい風が吹いていてとても気持ちよかった。
もっともっといろんな趣味の人達が集まって、デモの現場で好きなことをしてくれたらいいなと思う。好きな場所で好きなことをする自由と平和こそ、わたしたちが求め、守りたいと願っているものだから。
駅までの道を歩いていると後ろを歩く年配の人たちが「本当に若い人が増えたなぁ。2か月くらい前まではほとんど老人会だったのに」と笑っている声が聴こえた。ありがたいなと思うと同時に、見えないバトンをつないでいかなきゃいけないんだなと、背筋が伸びる気持ちがした。
デモになんて行ったってなんにもならない。SNSで承認欲求を満たすだけだ。そんな言葉を見かけるし、それを全否定もできない。そうかもしれないとすら思う。それでも、スマホを見つめるだけよりデモに行く方が気持ちはずっと軽くなる。それを知ってしまった。
書もスマホも捨てなくていい。持ったまま路上に出る。そしてやれることをやっていく。諦めないことがきっと、一番大事。
(以下はレポ)
永田町駅から地上に出ると、まだ2時前だったけど交差点はすで警察官でいっぱいだった。わたしは今日初めてタンバリンを持ってきたので議員会館前(国会議事堂裏)のドラム隊に参加しようかと、すでにズンドコ派手に鳴らしているほうに歩いていったけど、スタンディングできそうな場所に日陰が少なくてずっとここにいるのはきびしいかなぁと思って諦めた。中年のデモ参加は無理をしないのが大事だ。日差しは疲れる。

永田町駅の交差点に戻り、今度は国会図書館の方へ歩いていった。観光客の乗った二階建てバスとすれ違う。手を振ると振り返してくれた。良い日に国会前に来ましたね!
国会図書館前にはノボリを持った人たちが集まるゾーンがあってさっそく写真を何枚か撮らせてもらう。どれも個性的でとっても素敵!


そのまま歩いた先、信号をわたって右に折れるとそちらにも太鼓チームがいて楽しげ。デカフラッグやティラノさんもいる。

でもこのあたりからかなり混みはじめ、なかなか立ち止まることもできないまま結局は一番混む国会議事堂前に流されてしまった。そのあたりでスタンディングし、タンバリンでデモに参加した。


このあたりで目の前の警官らのことも見ていたのだけど、デモのベテランぽいおじいちゃんとおしゃべりしたり、カメラで対岸を撮影してる人に「いい写真撮れました?」とか聞いてたりしていて、夜のデモよりのんびりした感じが微笑ましかった。
よく見れば警官だって年下の子ばかりだ。君たちが武力で市民を弾圧しなきゃいけないような状況にならないよう、がんばるよ。

しばらくして反対側にわたって南のほうに移動する。

今日は解放されている前庭のピクニックゾーンに入ってみるとこちらもすごい人!わたしも適当にレジャーシートを敷き、座ってSNSを見たり読書したりして休んだ。デモは立ちっぱなしなのがけっこう膝につらいので、こうして座れる場所があるのはありがたいなぁと思う。


休んでチャージできたのでまた歩道に出て反対側に渡った。たくさんの赤い旗が舞いむちゃくちゃ盛り上がっている「路哲」さんエリアへ。一番混んでた。プロテストコールとバンドの音でほぼライブ会場。そこでしばらく参加しているうちにデモは終わっていたようだった。



路哲さんエリアはまだまだこれから!ってくらい盛り上がってたけど離脱して逆行するように坂を登り、北庭に入った。もう閑散としていたけどフラッグを並べて写真を撮っている人がいたり、『民衆の歌』を歌っているグループあり、トランペットを演奏するおじいちゃんがいたり、自由な空気。
そこから出てまた永田町駅を目指すと、のぼりゾーンの近くにはさっきは見なかった盆踊りチームがいてほんとうに盆踊りを踊っていた。楽しそう。そういえば今日は浴衣や着物の人をよく見かけたなと思う。
今日はそんなに長くスタンディングやコールに参加しなかったけど、それでもやっぱり疲れた〜と思いながらの帰り道、神保町ブックフェスティバルに寄ってしまう。最終日の終了時刻間際だったけど、本を求める人達で街はいっぱいで、「NO WAR」のプラカードを掲げているブースもあった。わたしは読みたかった台湾の小説を半額で買えてうれしかった。

デモに行ってコールし、好きなことをしている人たちを眺め、好きな場所で好きな本を読み、本と本が好きな人たちでいっぱいの街に立ち寄り、ほしかった本を買う。良い一日だった。こんな一日がずっと続きますように。ずっとそう祈ってる。