第14週「カゾク、ナル、イイデスカ?」、そして第15週「マツノケ、ヤリカタ。」

ついに間に合わなかったので二週ぶん合併の感想です!
あの大盛り上がりの13週最終回から年が明けると、やっと思いが通じ合ってしあわせ絶頂な二人のはずが、こっちが解決したかと思えばあっちがややこしく……と、なかなか一筋縄ではいかない二週間でした。
14週はまずは松野家にどう話を通すかで右往左往。その一方、トキは自分の家の事情を何も話さないまま事を進めようとしてヘブンはそれを不審に思う。
トキとしては借金のことも、建前上はただの親戚であるタエと三之丞のことも、言い出しづらいのはわかります。だけど家族になるからこそ隠したままではいられない。トキが隠していた事情を錦織から聞いたヘブンは披露宴みたいな場で暴露し(まぁみんな知ってたことだけど)それが白日のもとにさらされることに……。
「ウソ、キライ」そう言ってトキを責めたヘブンもまた、翌15週では今度は自分が嘘をつき、それをトキに責められます。
正座で訪問客らに応え、「日本人」らしいと褒め称えられる。そんな日々が続くことにうんざりしたヘブンは山橋薬鋪が裏(?笑)で開いている洋食店で一人こっそり西洋料理を食べながら息抜きをしていました。
この二週間にわたる二人のすれ違いや衝突を見ていると、パートナーに嘘を付くとはどういうことか、考えさせられます。嘘をつくのにも理由は色々あるとは思います。相手を傷つけたくないとか、嫌われたくないとか、関係を持続させたいがためにつく「やさしい嘘」というのもあると思います。だけどそれが露見すれば、嘘をつかれた方はやはり傷つきます。とくにこの二人は言葉や文化が違うからこそなおのこと、ちょっとした誤解も仲違いに発展しかねない。
互いに正直であることが大事だと学んだことが、この二人にとって、夫婦としての第一歩になったのかな〜と思いました。
そしてそれより気になるのはおサワちゃんですよ〜〜〜。玄関には大きなお花、貰い物の贅沢なお菓子、借金取りにサラッと渡す100円。今までずっと同じような境遇で励まし合いながら仲良くやってきたのに、「お金持ちと結婚」というカードで目に見えるしあわせを手に入れたトキに複雑な感情を抱いてしまうのもわかりすぎるほどわかる……。
「おなごが生きていくには身を売るか男と一緒になるしかないんだけんね」
これは第一週で遊女のなみがトキとサワに言った言葉です。このとき「そげなことない」と反論したサワは教師になるという夢を叶えましたが、貧乏ぐらしは相変わらずです。結婚することもなく自分の稼ぎで家族を支えています。そしてなみは、しょぼい色街から一歩たりとも出ることも許されないまま、遊女として働き続けています。サワやなみの胸の内を想像すると胸が痛い……。
このあたりはまた来週以降も描かれると思うので、三人とも幸せになれるよう心から祈りながら見届けたいと思います!!
●ばけばけな本
『明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語』(田中ひかる)
こちらは第11週で読んだ『明治のナイチンゲール 大関和物語』と同じく、田中ひかるさんのご著書です。本書はタイトルにある高橋瑞さんを中心としながらも、女性で初めて公認医師となった荻野吟子さん、二番目に公認女医となった生澤久野さん、東京女医学校を設立した吉岡彌生さんなど、明治の世に医学の世界に飛び込んだ女性たちの物語です。
ちなみに荻野吟子さんは1851年生まれ、そして高橋瑞さんは1852年生まれで、1868年生まれ小泉セツさんの親世代でしょうか。1864年生まれの生澤久野さん、1871年生まれの吉岡彌生さんはセツさんの同世代と言えそうです。
女性で初めて医師になった吟子さんは美人で潔癖な女性というパブリックイメージだったそうですが、日本で三番目の公認女医になった本書の主人公、高橋瑞さんは道なき道を根性で突き進むバンカラっぷりがまるで正反対でむちゃくちゃ面白いです!
五分刈りに二重マント、まるで「男隠居」と陰口を言われるも、貧者からは金を取らない「義」の医師であり続けた高橋瑞、あまりにかっこよすぎて朝ドラにしてほしすぎる〜!!
三日も四日も大学の門の前で立ち尽くし学長に直談判して女子初の入学許可を取り付けたとか、この時代に官費でなく私費(借金)で、しかも当てもなくドイツ語も喋れないのにドイツ留学するとか(そもそも当時ドイツの大学は女子の入学を認めてなかったのに聴講を許される)、エピソードがいちいち強烈で面白すぎるんですが、自分のやりたいことを無理でもなんでもやり通す力、それ自体が才能だなぁとしみじみ思います。
それにしても高橋瑞さん、実家とは縁を切ってるし、お金もツテもないから常に貧乏で、そうでなくても女が一人で生きていくにはあまりにしんどい明治の世を生き抜いたどころか、医者になってドイツまで行ってるの、あまりにパワフル。ファンです。
本書を読んでいると、まだ男女平等なんてほど遠かった時代に男性占有の学問の世界に入っていく女子学生らに浴びせられる嫌がらせに胸が痛みます。『虎に翼』で寅ちゃんたちが同じように男子学生らに嫌がらせを受けていたのを思い出してイ〜〜〜!となっちゃいますね。
当時、女医が増えることを批判する「女医亡国論」が専門誌を賑わせたりもしたそうです。
端緒は、瑞の留学直前に『東京医事新誌』に掲載された「S・F」という人物による「本邦の女医」という記事である。「S・F」は、「女子に医学を研究せしむるや否やは重大の社会問題」であるとし、女医の「問題点」を三点挙げた。
まず、妊娠出産によって診療ができなくなる期間、患者をどうするのか。次に、そもそも女は「解剖および生理上」医学を修める資質があるのか。そして「下宿屋の二階に男子生徒と寝食を共にする」ことで生じる「艶聞」についてである。
「妊娠出産によって診療ができなくなる期間、患者をどうするのか」ってそれ2018年に発覚した医学部不正入試問題のときも似たようなこと言ってる人いましたよね……進歩ね〜〜とガックリしてしまいます。
瑞さんは我は我の道をゆくタイプなのでこういう社会問題に口は出さず、ただ自分の背中を見せながら後進には金を出して援助するタイプだったようですが、「女医亡国論」に堂々と誌上で反論する本多詮子さん(日本で四番目の公認女医)や、地元で地域医療をコツコツと続けて地元民からの信頼を得た生澤久野さん、女子のための初めての医学校を設立した吉岡彌生さんら、道なき道を切り開いた女性たちが未来の女医たちのためにそれぞれのやり方で闘う姿も本書には描かれています。
「雨垂れ石を穿つ」という言葉は寅ちゃんを絶望させた言葉でもありますが、やっぱりこうして先人のひとりひとりがこうして闘ってくれたかからこそ、女性医師が当たり前にいる今があるんだな〜と胸が熱くなります。と同時に、『虎に翼』を見たからこそ、医者になりたくてもなれなかった女性たちもたくさんいただろうな……と思って切なくもなりました。名前の残らなかった人たちの悔しさもまた、時代を推し進める原動力になったはず。
というわけで本書、『虎に翼』が好きだった人にもぜひぜひおすすめです!!