近代日本女性の年表を作った話

hinata625141
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朝ドラ『虎に翼』が好きすぎて近代日本女性の年表を作ってしまいました!

作ったからどうするということもなくただの自己満足なのですが、Xにポストしたらけっこうたくさんのひとに見てもらえてうれしいです。

でもそんなに作成に時間かかってないんですよね。前に女性詩人の年表を作ろうとしたことがあって(すぐに年表を作りたくなる人😂)その雛形があったのと、ここ5〜6年くらい近代の女性に興味があって評伝や映像にちょくちょく触れてたんですね。だから年表に入れる女性の候補はすぐにリストアップできて、とはいえスペース的に全員はとても入らないので最終的な人選は悩んだんですけど、まあ個人の好みで。。笑

ふと思いついて作ってみた年表ですが、今まで頭の中にいたけどバラバラだった存在が繋がっていく、それが面白かったです。この人とこの人は歳が近いのかーとか意外な発見もありました。

せっかくなので年表の参考文献として、過去に読んだ作品や見た作品などをリストアップしてみます。


栗原康『村に火をつけ,白痴になれ 伊藤野枝伝』

親の決めた結婚から逃げ出し自分の先生であった辻潤と結婚し、『青鞜』に参加して文筆家として頭角を現すも、数年後にはアナキスト大杉栄と恋に落ち、関東大震災直後のドサクサの中で取調べ中に不法に殺害された、あまりに激しくも短い、たった28年の人生。栗原さんの文章はクセが強いんですけど勢いもすごいので一気に読んだ記憶があります。


瀬戸内寂聴『美は乱調にあり 伊藤野枝と大杉栄』『諧調は偽りなり 伊藤野枝と大杉栄』(上)(下)

伊藤野枝と大杉栄のみならず、当時のアナキスト、社会主義者たちの人生を描ききった大作。めちゃめちゃ面白かったです。連載されてる当時、まだギリギリご存命の関係者がけっこういらっしゃって、フッ軽な瀬戸内さんが直で取材されたりしてるライブ感もすごいです。

『美は〜』のほうは柴門ふみ先生による漫画版もあります。


金子文子『何が私をこうさせたか』

関東大震災直後に同棲していた恋人・朴烈と共に拘束され、大逆罪で死刑宣告を受けた金子文子が獄中で書いた自身の半生。保護者たちに踏みにじられた子供時代の悲惨さと、それでも折れずに自由を求め続けた生き方と、それを記すパワフルな筆力に引っ張られてほぼ一気読みでした。長生きすれば街場のフェミニストとしてたくさんのすばらしい作品をを残したのではないかな…

彼女の書いたものは青空文庫にひとつだけ「父」という子供時代を振り返った作品があって、父親がひどすぎて大変気の毒だけど文章がうまくてぐいぐい読ませられる。


瀬戸内寂聴『余白の春』

金子文子の評伝です。こちらでも瀬戸内さんフットワーク軽い軽い。文子の生まれ育った土地や韓国のお墓、朴烈の親戚の家までガンガン取材に行っちゃうし、時代も時代なので朴烈の仲間だった陸洪均なども健在でいろんな裏話も聞けてるし、当時の韓国の様子も含めルポタージュ的な側面が強く初めて知る話も多くて面白かった。


田辺聖子『ゆめはるか吉屋信子 秋灯机の上の幾山河』

わたしが持ってるのは朝日文庫から出た分厚い上下巻だったんですけどずっと絶版で(わたしも古本で買った)、それが去年中公文庫から三冊に分冊して発売されてました!めっちゃ面白いしめっちゃ読み応えあるのでオススメです。

吉屋信子の個人史であると同時に大正昭和の女流文壇史でもあり、視点や文体に甘さがあればそれは批判し、男社会の文壇で軽視され続けた吉屋の再評価にも挑んだのが、かつて吉屋の小説を愛読し戦火から逃れた少女、田辺聖子、というのがもう泣けます…😭

女性のパートナーを持ち筆一本で時代の寵児となった吉屋への文壇とマスコミという男社会の揶揄がほんとさもしいんだけど、めげることなく腕を磨き、書きたいものを書き続け売れに売れた作家としての生き方が本当にかっこいいです!


『らんたん』(柚木麻子)

恵泉女学園を創設した河井道と彼女を支えた一色ゆりの物語。津田梅子、広岡浅子、市川房枝、山川菊栄…当時の女子教育を推し進めようとしていた女性たち、フェミニストたちが次々と出てくるのが楽しい。伝記小説としても優れてると思うけど物語としてもすごく面白いんですね。ぜったい朝ドラにしてほしい。


『ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉市川房枝 ─女性解放運動から社会変革へ』

市川房枝の政治活動の歴史であるとともに、市川が対峙した男性優位社会を特徴付ける日本政治の歴史でもあります。金権政治は終わりにしましょう、女性の人権を大事にしましょう、二度と戦争に加担しないようにしましょう。あまりに真っ当すぎる市川先生の主張、哀しいかな2024年の現代においても未だ道半ば……


『未来から来たフェミニスト 北村兼子と​山川菊栄』

北村兼子は女性として初めて法律の世界に飛び込み(入学は叶わず聴講生として)、のちにジャーナリストとして女性差別と闘った人。彼女が法律について書いた文章「私はわらう」は今読んでも、いや「虎と翼」を通して女に不利な法律に直面している今こそ面白いと言えます。

何事も男万能の世の中に少し無理な要求かも知れないが、日本には男ばかりでなく御邪魔様ながら「女」というものが三千万ばかり活きさせてもらってるということを治者の頭に持ってもらいたいのである。

こんな法律で治められている国民は禍である。特に全国民の半数を占めている女性が求めるところは六法のドノ条項にも反映していない男護ヶ島にだけ通用する変な法律に治められている女は更につらい。

煽りかうますぎないか😂 法律の文章をもっとわかりやすくしろ、審議の場に女を加えろ、男が決めた法律では女は生きづらいのだと、趣旨をストレートに書きながらめちゃめちゃイヤミで煽るのが面白い。

本書では人見絹枝についての文章もある。北村兼子と人見絹枝はともに関西出身の著名な女性であり、兼子は27歳の若さで亡くなったが、絹枝は兼子の死の一週間後にさらに若い24歳で亡くなった。絹枝もまた新聞社勤めで練習、競技、講演、記者としての仕事に明け暮れ疲労を積み重ね、かつメディアの注視に晒されゴシップ記事を書き立てられた。生真面目な彼女がどれほど心をすり減らしたか、想像するだけでつらい。もっと長生きできたのではないかと考えてしまう。

山川菊栄は社会主義者のフェミニスト。彼女の言論は今読んでも正しいと思えるものが多くて、すごく頭の良い人だったんだろうなーと思う。軍拡にも反対し、戦前も戦後も筋が通っているのが格好いい。


イザベラ・ディオニシオ『悩んでもがいて、作家になった彼女たち イタリア人が語る日本の近現代文学』

現代よりもっと苛烈に保守的な時代に作家として生きた女性たちの人生。その全てを語るには短いけど、そのぶん注目ポイントが面白いし読みやすかったです。与謝野晶子、宇野千代、瀬戸内寂聴、樋口一葉、円地文子、向田邦子、有吉佐和子、林芙美子、森茉莉、幸田文というラインナップが良すぎる。


『100分de名著 林芙美子』(NHK)

ナビゲーター柚木麻子氏の紹介が良すぎる。何かを紹介させたら日本一だと思う😂

番組見たあと本作も読んだけどキレッキレの日記文学で面白かったです。無敵のエンターテイナー。


『いだてん』(NHK)

女が肌を見せるなんて、と眉を顰められた時代に走ることの喜びを知った女中のシマ、富江ら女学生たち、そしてシマに見出された人見絹枝が日本女性初の銀メダルを掴み取るまでの、偏見と揶揄にさらされた女子スポーツの黎明期が描かれる。「男は負けても帰れるでしょう。でも女は帰れません」絹枝演じる菅原小春さんの名演でした…😭 

年表作りながら、本当に人見絹枝さんは短命だなぁ…と切なくなりました。


『風よあらしよ』(NHK)

村山由佳さんによる伊藤野枝の評伝小説の映像化。野枝を演じたのが吉高由里子さん、大杉榮を演じたのは瑛太さん。終盤の関東大震災のシーンや殺される間際の官憲との対決シーンは迫力があってとても面白かった。

吉高さんはNHKで女性作家の役をやることが多いですね〜


『春子と節子』(NHK)

戦前から活躍し仲良しだった二人の女性画家、長谷川春子と三岸節子をテーマにしたドキュメンタリー。二人は戦争協力という踏み絵をめぐって袂を分つことになる。春子の姉の長谷川時雨が創刊した『女人藝術』という雑誌の仕事を通じて二人は林芙美子とも仲が良かったそう。

この二人も年表入れたかったなぁ。


『金子文子と朴烈』

これも『いだてん』と同じ年に日本公開されました。日本人の金子文子と朝鮮人の朴烈、恋に落ちた二人の主義者の楽しかった日々と過酷な運命。『風よあらしよ』と同じ時代の東京を舞台にした韓国映画。関東大震災も描かれます。二人を演じたチェ・ヒソとイ・ジェフンがとにかく魅力的!

こちらプライムにあります。


二兎社『私たちは何も知らない』

雑誌「青鞜」の物語。女たちが自由に書きたいことを書ける場としての熱狂からはじまり、世間からのバッシングや資金繰りの難しさという現実の前に少しずつ綻びを見せていく。藤野涼子ちゃん演じる野枝の若い泥臭さと、朝倉あきちゃん演じる平塚らいてうの掴みどころのない軽やかさが良い対比になっててとても面白かったです。


たぶんほかにもあると思うけどパッと思いつくのはこんな感じでした。偏りがあるのは自覚してます😂

『美は乱調にあり』『階調は偽りなり』『ゆめはるか吉屋信子』『らんたん』を読むとかなり近代女性押さえられる気がします。わたしも読み返したいです。あと山川菊栄についてもっと知りたいので近いうちに何か読んでみるつもり!

@hinata625141
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