無色透明な場で

hinata625141
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公開:2026/6/10
コミティアの看板

今日はひさしぶりにコミティアに行った。最近どハマりした『煙たい話』の作者の林史也さんが出展されると知り、それならば絶対行こうと決めてました。好きになったらすべての紙の資料を押さえたがるオタクです。boothでも買えるんだけど、行けるなら直接買いたいしね。

これまでコミティア行くときはお友達の寺さんの漫画を買うのが目的で、取り置きしてもらってたので午後にのんびり顔を出す感じだったのだけど、今回はそうではないので少し早めに家を出た。といっても現地着いたのは12時すぎ。空模様はどんよりだけど暑くはないので体は楽だ。カタログ(入場チケット代わり)買う列はまだ長かったけどサクサク進んだのでスムーズに入場できた。今日もやっぱりすごい人出だ。

まずは一番の目的の林史也さんのスペースを探していると、それらしき場所のほとんど空になったスペースの前で関係者らしき人とスタッフの人が何か話していて、聞けば急遽スペースが移動になったという。再オープンもうちょっと時間かかると思います、と説明された。大きい通路向きのスペースではあったけど壁ではなかったので、列が入りきれなかったんだろうなぁ。大変そうだ……と思いつつ、他を先に見て回ることにした。

まずは高野雀さん。『あたらしいひふ』や『さよならガールフレンド』など商業コミックを何冊か持っていて好きだったので、今回出展されると知ってそれならばとスペース番号をメモしておいた。少しだけ並んで、新刊と過去作からも一冊、買わせてもらった。高野先生、にこやかでやさしい。おまけでタブレットもいただいた。

そしてXで知って気になっていた『コマ送り』というアニメ業界のフェミニスト有志団体によるZINE。実際手に取ってパラパラと読むとすごく良さそうだったのでvol.1とvol.2(新刊)、そしてほしかった反戦パッチを購入!

コマ送り1と2と反戦パッチ

あとたまたま前を通って目に止まったイラストメインの映画の感想ZINE「最近みた映画とか」を購入。やっぱり感想って敷居が低いよなと思う。書き手と読み手の間に共通の知識があるのでとっつきやすいと言うか。会場での出会いとしては感想本は強いと思う。

そんな感じでしばらくふらふらとしたあと、そろそろかな〜と林さんの移転先を探して行くと会場の隅っこ、壁サーと背中合わせに搬出口の外側に向いたブースで(緊急用?)すでに屋外まで人が並んでいる。わーほんとに人気なんだなぁとうれしく思いつつ最後尾に並んだ。

そしてあと一人か二人、のタイミングで売り子さんが「新刊売り切れましたー!」と……うわぁほんとうにあるんだなぁこういうことが……。わたしは林先生の同人誌は一冊も持ってなかったので他に買うものがたくさんあるのだけど、既刊をすべて持っていて新刊のみお買い物に来た人がいたらショックだろうなぁ。だからみなさん早くから並ばれるのね……。

わたしが並んでいたほうはたまたま林先生ご本人が売り子をされていたので、プラカード出して直接「いつもデモで使わせてもらってます。ありがとうございます」とお礼を伝えられて良かった。そういえば肝心の『煙たい話』がどうしようもなく好きですということは伝えてなかったとあとで思い出したのだけど、新刊以外全部くださいをしたので伝わってると思いたい。無配の「NO WAR」カードももらって大満足で離脱。新刊は通販で買わせていただきます。

林先生作のプラカード

もう見たいところはほとんど見たのでもう帰ってもいいかなぁと思ったのだけど、せっかくだし反戦ステッカーとか売ってるとこあったら買って応援したいな〜とXで検索してみたけど、思った以上に、ない……。正直、コミティアは政治的な表明への忌避感を文フリよりずっと強く感じる。

今回買った「コマ送り」の中で、アニメーターは「政治的無関心」で「職人」であることを求められる、というような内容のインタビューがあった。だけどそれは特殊な業界だけのことではなく、日本社会全体で感じる空気でもある。政治的無関心であれ、と。

『銀河の一票』のプロデューサーである佐野亜裕美さんはインタビューで「「テレビ業界に入ってからずっと『政治と宗教の話は飲み会の場でするな』と言われ、政治の話がマスコミでもタブーになっていることが気になっていました」と語る。ドラマの中でやがて都知事選に立候補するあかりは初回では「政治の話はよくわかんないかな」と気まずそうに笑っていた。

Xでは「政治の話するとフォロワーさん減るのわかってるんですけど」という枕詞や、「政治と趣味は切り離されているべき」なんて意見もよく見る。デモの場に推しのペンライトを持っていくことにさえ、強い拒否感を持つ人もいる。

とはいえ今は日々、本当に日々、悪いニュースばかりで状況は切迫していて、声を上げるクリエイターさんたちも多いし、「オタクによる反戦デモ」もすでに二回、国会前で開催されている。文フリ以外のビッグサイトのイベントでも終わりに会場外でデモが行われていたりしたのも知っている。

「政治的無関心であれ」の空気は変わりつつある、そう思っていた。

それだけに、今回のコミティアの場では、思ってた以上に自分は自分のフィルターバブルの中にいるな〜ってことを自覚させられたし、「政治と趣味は切り離されているべき」的な透明な壁が見えた気がする。

もちろんだけどあの場にいた膨大な数のクリエイターさんたちが政治的無関心とは思わない。日々のポストでは政治の話をする人もいるだろうし、SNSで出さなくても一人で考えたり身近な人と話をしてる人もいるだろう。

そもそも政治的な話をするのはストレスだし、したくないのもよくわかる。わたしだって話をする場所は選んでいる。だから今回のコミティアでも、本当は反戦やハッピープライドのメッセージを出したいと思いながらも、やっぱりやめた人もいるかもしれない。

だからもしそういう人がいたら伝えたいのは、政治的すぎるかな?とちょっと不安に思うメッセージでも、これから先もし出してくれたら、わたしは必ずあなたを見つけて買いに行きます!ということだ。

反戦シール

ぐるぐる回ってなんとか見つけた反戦グッズ。心強いです。ありがとう!

今回のコミティアの目的だった林史也先生この馬鹿でかい会場の中で数えるほどしかいない、反戦シールを無配で配ってくれる作家さんであることもうれしかった。だけどそもそもの出会いは「NO WAR」のプラカードだったのだ。作品より先に政治で繋がる、というのもめずらしいかもしれない。

『煙たい話』はとくに政治的なトピックが出てくる漫画ではないけれど、雑に語られがちな「普通」を丁寧に解きほぐしながら再検討するような物語で、そんな物語そのものが今目の前にある社会の規範に静かに抵抗している。そのことに胸を捕まれた。「思想が強い」なんて言葉が悪口として使われたりもするけど、わたしは作品ににじみ出る作家さんの思想こそ、愛してる。

創作も政治も消費も思想も、わたしにとっては入り交じるモザイクのような世界に生きている。全部繋がっていて、切り分けられない。だからどれも大事にしたいし、無関心なフリもしたくないなと思ってる。

ちょうどプライド月間が始まったところで、つくたべのゆざき先生や同級生シリーズの中村明日美子先生がハッピープライドの絵をアップしてくれたことがとてもうれしかった。創作は、たった一枚のイラストは、誰かの心をそっとあたためたり、背中を押してくれる力がある。こんなにも。

「政治的無関心であれ」の空気は変わりつつある、そう願ってるよ。

@hinata625141
感想文置き場。たまに日記。