第21週「貞女は二夫に見えず？」
貞節な女性というものは、夫に先立たれても、先夫に操を立てるため、再婚はしないものだ
さてさて、轟の恋人紹介から始まった今週は婚姻の平等と、そして今よりずっと生きづらかっただろうセクシャルマイノリティにスポットを当てた、吉田さんらしい週でしたね！
まず轟、おめでとう〜😭😭😭 寅子に堂々と時雄さんを紹介するのも、寅子が微妙な反応をしても快く笑顔を向ける君の強さがまぶしい〜😭😭😭
まあ寅子の反応の微妙さは当時としてはこんなものじゃないかな〜と思う。知る由もなかったわけだし。それよりすぐに自分の悩み相談に切り替えられるのがマジ寅子って感じでつよい😂
「自分ごとになるまでどちらかが名字を変えなくてはいけない意味について考えてなかった」と寅子は自分の悩みを話しつつ「そして男女の恋人のことしか考えてなかった」と轟に改めて謝罪する。「人間なんてそんなもんだ。今振り返ってみればの連続」と轟は言って、自分のセクシャリティのことや花岡への気持ちについて語る。よねの言葉で救われたこと、そして時雄と出会ったことも。
結婚はできるけどそれに伴う改姓をしたくない寅子と、そもそも好きな人と法律婚できない轟。この二人の悩みを同時進行で語らせることで、今もなお続くこの婚姻制度の問題がくっきりとあらわになる。選択制夫婦別姓も、婚姻の平等も、当事者たちがどれほど望んでもいつまで経っても認められない。
この先の人生、お互いを支えあえる保障は法的にない。俺等が死ねば俺等の関係は世の中からはなかったことになる。じいさんになって人生を振り返ったとき、俺は心から幸せだったと言いたいんだ。
そう言う轟の背後にある壁に書かれた憲法第十四条が、みんなの希望だったはずのそれが、虚しく見える。「法の下の平等」から弾かれた人たちがいることをこの物語は見逃さない。
一方で夫婦が姓を同一にしなければならない問題についてはよねが「結婚しても名字を変えたくないと思うことも当然の権利だ」と言い切る。そして「誰の顔色気にして弱気になってるんだ」という言葉には「昔のお前なら…」という言葉が続きそうで、やっぱりよねさん寅子のことよくわかってるー！と嬉しくなった。
寅子は旧姓で仕事を続けられないか桂場におうかがいをたてるも、あっさりと却下される。「なぜそんなくだらんことにこだわるんだ」と呆れたように言う桂場に、あんこの味を引き合いにしながら「わたしのこだわりをくだらないと断じられる筋合いはありません！」とガチで怒って言い返したのがひさしぶりに寅子らしくてかっこよかったし、そこですぐに「失言だった」とすぐに認められるのも桂場らしくてよかった。寅子、桂場には遠慮しないよね😂
そしておにぎりの会です！
まず、水越とものりさん、ニクまろさん、中村中さんらの当事者キャスティングが本当に素晴らしかったです👏 そもそも日本ではオープンリーゲイの役者さんがゲイの役を演じること自体めずらしく、ましてや朝ドラでは初めてなわけで、それだけで記念碑的な回になるはずなのに、まさかのトランスジェンダー当事者がトランスジェンダーの役を演じたものだからいろいろ渋滞してました😂
このドラマは一貫して当事者をキャスティングしてきた。朝鮮人も在日朝鮮人も。そのこと自体が本当に素晴らしいと思う。
本来役者さんがセクシャリティや出自をオープンにする必要はないと思うけど（今の日本ではそれによってキャスティングの可能性が狭まったりすることもあると思うので）、マイノリティの役をマジョリティの役者が演じることにモヤモヤした気持ちを抱える当事者の方や当事者の役者さんもいると思う。だから勇気を出してカミングアウトしている役者さんには、その当事者の役を優先して起用してほしい。そうしてくれる作品を推したいし、それが当たり前になればいいと思う。
NHKは最近当事者キャスティングにこだわっているなと思っていて、例えば『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』ではたくさんのろう者、難聴者の当事者が出ていたし、『パーセント』では出演者の約3割が障害者で障害者役を演じた。そしてどちらともとてもクオリティの高いドラマだった。今後もこの方向性を維持してほしいな〜と思います。
炊き出しのおにぎりをみんなで握りながら話をするシーンは寅子の学生時代の毒まんじゅう検証回を思い出す。そのときも思ったけど、やっぱりなにか手作業をしながらだと話しやすいんだと思う。
何でも聞いて、でも答えたくないことは答えないから、というみんなにおずおずと質問する寅子、そして優未。この場に優未がいてくれたことが本当に良かった。知らないことを知らないと、理由なんて必要ないよねと、ただ受け取れる素直さが遠慮まみれの大人たちのなかで眩しい。
正直言うと最初は、「わたし知らなかった。手術すれば男の人から女の人になれるんだね」と言う優未に、中村中さん演じるバーのママ山田が「うんそうね、だいぶ近づける。優未ちゃんは女の人になるためになにか頑張ったことってある？」と聞き返したのは、朝ドラ視聴者にとってはハイコンテクストなのではないか、もっと説明すべきじゃないかと思った。だって視聴者のなかのどれくらいの割合かはわからないけど、トランスジェンダーがなにかわかってない人もぜったいいる。SNS上のトランス差別は酷いし、それを鵜呑みにしている人だって見てる。そもそもこのシーンはマジョリティ（寅子と視聴者）への説明会みたいなものだから、たとえ説明台詞っぽくても、トランスジェンダーがどんな違和感を抱えてきたか、手術しなきゃいけないくらいに苦しかったか、その気持ちを話して共感を呼んでほしかった。
だけどそこから続く当事者たちの、「頑張ったり理由を考えたり説明したりしなきゃ自分が認められないことが、ずっと苦しい」「ぼくらだけいつも理由が求められる」「そもそも型にはめる必要なんてないし、自分が何者かを誰かにわかってもらう必要もない」というセリフにも、そうだよな〜〜〜と思う。
とくに「自分が何者かを誰かにわかってもらう必要もない」は本当にそうなんですよ。わかってもらう、共感してもらう必要なんてない。それはそう！！！
だけどこの回の放送後に吹き荒れたトランス差別とバックラッシュはほんとうに凄まじかった。山田ママのセリフを曲解してのトランス差別もひどかったけど、寅子と航一が事実婚を選ぶ展開に対しても史実と違うと、おそらくここまでずーっとこのドラマのポリティカリー・コレクトに対して苦々しく思ってた層が吹き上がった感があった。
このドラマの制作陣はそんなバックラッシュに負けない気概はあると思う。だけどSNS上にあふれるヘイトを見たいち当事者たちを守れるだろうか。「自分が何者かを誰かにわかってもらう必要もない」は本当にそう、正論だけど、やっぱりわたしはこういう状況も想定してほしかった。多少ぬるくても説明して共感を呼んで、ヘイトを抑えてほしかったなと思う。このドラマに勇気づけられたマイノリティの人たちのためにも。
そして寅子と航一の結婚問題。事実婚にしましょうという結論はこの二人っぽくて良いなと思うのだけど、とにかく航一さんが相談せずに結論を突然話すのはずっと変わってなくて、寅子は桂場より航一にキレたほうがいいのでは？と思ってる。だから航一が「なるほど、言葉足らずだったようです」って言ったのは自覚あったんかーい！って笑った。ここまでずっと言葉足らずだよ！？
夫のようなもの、妻のようなもの、夫婦のようなもの。同じ吉田さん脚本作『恋せぬふたり』の「家族（仮）」っぽい。法律に沿わない関係性でいること、それによる不具合が起きるのであればそれは法律や社会がおかしいわけで。これから先はわからないけれど、とりあえずは事実婚を選んだふたりを誇らしく思う。それは仲間たちもそうだよね。
主文 私たちは申立人の夫婦それぞれの姓での婚姻関係を認める
理由 民法において夫婦はどちらかの氏を名乗ると決められてはいるが、姓を変えることは夫婦どちらかの社会生活に不利益や不都合をもたらす恐れがある。名前を変えることで自分が失われると感じる人もいる。夫婦のどちらかがそれを負うのは平等とは言えないのではないか。同じ姓を名乗ることが夫婦や家族であることの証にはならないと考える人もいる。同じ姓を名乗るかそれぞれの姓を名乗るかは申立人の夫婦間で自由に決定するべきである。それは憲法により保障された権利のはずである。よって星航一と佐田寅子のそれぞれの姓での婚姻関係を認め、主文の通り決定する。我々の主張には法的効力はないが、これを二人への結婚の祝いの言葉とする。
こんなの泣かずにいられないよ〜😭😭😭
ずーっと待ってた、女子部再集結。どんな状況でも泣けると思うけど、寅子の法律によらない再婚を、かつて法律を学ぶために集まった学生仲間等が法的根拠を示しながら選択制夫婦別姓を認め、祝いの言葉とする。70年後でさえ叶ってない夫婦別姓の未来を見せてくれてありがとう😭
このあとの同窓会もほんとうによかったですね。生きていればこんなこともある。そんな幸せを見せてくれてありがとう😭 わたしも新潟のライトハウスまで行きます😭😭😭
来週の予告では星家とのいざこざが描かれそうだけど、今週の百合さんが優未に「おばあちゃん」と呼ばれて落涙したのにぐっと来た。百合さんはずっと星家で「百合さん」と呼ばれてたんだよね。再婚のタイミングでもあるんだろうけど、これまでずっと家族に尽くしながら「おかあさん」とも「おばあちゃん」とも呼ばれなかった百合さんの孤独を思うと、優未と仲良くなってくれたらいいな〜と思う。
20週のシナリオ、まだ読めてないんですよね。というわけでシナリオふりかえりはおやすみです！
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