2023年を背負い投げ

omikan
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年明け、祖父が嬉しそうにスマホの画面を見せながら、僕にこう話した。

「最近散歩を始めたんや」

これまで駅伝かゴルフか時代劇かをテレビで見ている姿しか見てこなかったから、素直に驚いた。これまで勤めてきた仕事を引退してからというもの、体がなまって仕方ないからと散歩を日課にし始めたらしい。嬉しそうに、毎日スマホに撮り溜めた散歩道中を見せてくれた。

環境が変われば人も変わる、とはよく言ったものだ。

そんな僕も去年、東京のデジタルマーケターから和歌山の片田舎のみかん農家へ転身した。土地も違えば業種も違う。いわゆるホワイトカラーからブルーカラーになり、在宅ワークで1日50歩の世界から、野に山に1日1万歩駆けずり回り作業する世界へ。もう手のひらが回り過ぎて、逆に360度回って元に位置に戻ってきたくらい違う環境へやってきた。

ただ、僕は何か変わったのだろうか。見ているものは、考えていることは、これまでの地続きになっているのではないか。少し怖くなる、昨日の自分に何か一つでも足し算できていなかったことが。だから毎日、昨日の自分に問い掛けたい。

「知らないことに、出会えたか。」

今年の目標は、知らないことを知ること。それを形にすること。これまで自分がやってこなかったこと、農業界では考えられてこなかったことを何か一つでも形にして、来年への片道切符としたい。

@hirokan
現役みかん農家。今年は読み書きを頑張ります。