そろばんをしていた時、良い感じの波に乗れると周りの音が聞こえなくなる時がたまにあった。
いつもは隣の人がパチパチと珠を弾く音にリズムを乱されたり、雑音に集中が途切れそうになったりするけど、自分の弾く珠の音がまるで世界の旋律を奏でているかのような時がたまにあった。
そんな目の前の問題に深く、深く集中できる時間がとても好きだ。だから、大学卒業までの15年弱も続けられたのだろう。
何かにのめり込める時間はすごく楽しいし、あっという間に時間が過ぎていく。
でも、その「何か」に出会うことはすごく難しかったりもする。だから、あれでもないこれでもないと、頭を悩ませながらどんどんつまみ食いをしていく。
そんなこんなで、5.6ページしか呼んでない文庫本を傍目に、今日もまた町の書店へ出かけに行くのである。