この世界の営みと力の質の結果

廣石鹸
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「私は現行の世界の営みと、それを動かす力の質が大嫌いです」蔦木栄一 1991/4/1 (突然段ボール/抑止音力 ライナーノーツ)

たしか小学校四年の冬頃だったと思う。いしいひさいちの漫画本を買い、いざページを開くとこの衝撃的な言葉が目に飛び込んできた。

突然段ボールとはいったい何を意味するのか?蔦木栄一とは誰なのか?ライナーノーツとは何だ?そんな事は10歳そこらの自分にはさっぱりわからなかったけれど、現代文明をフルスイングで全否定するこの言葉には目の覚めるような衝撃を覚えた。こんなにも悪意を内包しながら、著者の人間的魅力を強力に放つ文章に初めて出会ったからだ。こと表現においては悪意でさえ価値に昇華されうる。なんてこった。

ともかく。突然段ボールという少し変わったバンドが存在していること。蔦木栄一氏はそのバンドの(恐らく)フロントマンだったこと。この言葉はこのバンドの「抑止音力」というアルバムのライナーノーツの文章の一部であること。これらの事を知ったのは10年以上経ってからだった。ナゴムやたまにハマり突然段ボールに辿り着いた時の衝撃は今でも忘れられない。「この人たちだったのか!」

そう考えると随分と妙な道筋でこの言葉に出会ってしまったものだけれど、この言葉とこれ以外の出会い方をしていたら、こんなにも頭に刻み込まれなかったかもしれない。これこそが「この世界の営みとその力の質」の巡りあわせで、それが大嫌いでも、なんだか可笑しく感じてしまっても全く構わないのだ。アーメン

@hirosekken
すべてフィクションです。