池袋のグランドシネマサンシャインでオッペンハイマーを観てきた。めっちゃよかった…観終わってやっと余韻が抜けてきたので感想を書く
iMAX
映画の大半は会話で構成されている映画にも関わらず展開がコロコロと代わり緊迫感が取れない。iMAXを使った映像は会話している役者のアップ映像だけでも大迫力で、できる限り大きなiMAXスクリーンで観て欲しい。爆発や足音が踏み鳴らされるシーンではスピーカーから振動がきて席が揺れていた
冒頭-マンハッタン計画
冒頭の学生のころのシーンは雨がポツポツと落ちる様子を眺めるオッペンハイマー(後に爆弾の影響範囲を表すコンパス円の図の暗喩と知る)や巨大な重圧に押しつぶされそうになる葛藤をエモーショナルに描かれていてさっそく引き込まれた。ドイツでハイゼンベルグと会うがその後の結末を知っているのでもう会うことはないのだなと思うと切なかった。純粋に研究に打ち込めた時代は短く戦争に飲み込まれていくさまはなんとも悲しい。
マンハッタン計画が始まってからは物理学者というよりも巨大なプロジェクトと科学者をまとめるマネージャーとしての側面が強いのは意外だった。国から命令されやらされてるというよりは強い使命感を持って仕事をしているのも前情報ない自分としては意外だった
原爆
マンハッタン計画チーム内でももうドイツが降伏したことだし研究を辞めましょうよ。という声が出る中、「原爆の力を民衆が知ることでこれ以上核の力を人々は使おうと思わなくなる。抑止力となる」とオッペンハイマーは説得するが、それは大義名分だった。実際、戦後は自身も水爆反対派に回って政府から弾圧される。
計画のリーダーとして止める道がない(彼の権限で止められない)なか、トリニティ実験と淡々と原爆を落とす場所を決めるシーンは日本人として心にくるものがあった。歓声でわく研究チームをスクリーンで観ながらものすごく距離感を感じた。
オッペンハイマーと妻
オッペンハイマーの妻キティとして、夫の不倫に苦しみながらも夫の仕事を支えたり、女は子育てして家庭にいるものという当時の価値観が合わず育児ノイローゼになったりと複雑な女性像をエミリーブランドが演じているがめっちゃ良かった。
映画の後半までは不倫や育児のストレスで夫婦関係は良くなさそうな感じだったが、最後の最後政府から秘密情報へのアクセスを遮断され更迭されるオッペンハイマーと妻が手を握って家に帰るシーンは夫婦の年輪を感じて泣けた…。
"プロメテウスは神々の炎を盗み、人間に与えた。この行為により彼は岩に繋がれて、永遠に罰せられた"
これは冒頭のシーンのテロップだが、映画を通してオッペンハイマーがその罪の贖罪に苛まれる。ただ、彼を描くにあたって罪を贖罪する殉教者とも偉大な学者とも表現せず、あくまで一人間を描いた伝記映画として極めて中立的な目線で作られているのがすごくよかった。