JRPG『Chained Echoes』は、再起(セカンドチャンス)の物語

hirotoarakawa
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ドイツ産JRPGのインディーゲーム『Chained Echoes(チェインド・エコーズ)』をクリアした。

ドット絵の世界観、ゲームシステム、音楽、ともに素晴らしかったが、ここでは感動的なストーリーのテーマについて重大なネタバレありで、考察を書き留める。

⚠️ 重大なネタバレ注意

Chained Echoes は、90年代のJRPGをオマージュしており、特にストーリーは『FF6』と『ゼノギアス』を合わせたような、難解で複雑な設定とシリアスな展開が最後まで続く。

だが、ストーリーのテーマは一貫して「再起(セカンドチャンス)」をシンプルに描いている。

主人公のグレンは、物語上3回の挫折を経験する。

1度目は、グラン・グリモワールを解放してしまい、大災害をもたらしてしまった時。

2度目は、グラン・グリモワールによる2度目の大災害の阻止に失敗してしまった時。

3度目は、前世でレニーを殺害した犯人が自分であることに気づいた時。

グレンはその度、自責の念(Chained Echoes)に囚われるが、仲間たちによって立ち上がることができ、人間的に成長していく。

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物語冒頭から共に旅をしてきたキリアは、平和のために、自分の考える方法を信じ、仲間を裏切り、最終盤ではボスとして、グレンたちの前に1人で立ちはだかる。

敗れたキリアは、自分の過ちを悔い(Chained Echoes)、そのまま消滅するかと思いきや、グレンから力と役割を譲渡され、生き延びる。グレンはキリアの代わりに消滅してしまう...

そしてキリアは、グレンの後を継ぎ、新たな旅に出る。

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物語上ではグレンとキリアが対照的に描かれているが、もう1人、対照的な人物がいる。帝王フレデリックだ。

フレデリックも平和のために、自ら暴君を演じる。最後には共にする仲間もいなくなるが、目的を達成して自害する。

またフレデリックも、平和を求める民衆を扇動する帝王としての重圧(Chained Echoes)が今までの行いの動機であったことが、最後のセリフで明かされる。

グレンやキリアと異なる点は、自分の行いが間違っているとわかっていても、目的を達成するには正しい行いだった、と最後まで信じていることだろう。

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ゲームのタイトルにもなっている『Chained Echoes』は、自分の記憶やトラウマによる後悔や束縛…自責のことだ。

人は自分の心の声に従って行動し、時には取り返しのつかない過ちを犯す。

一度行われた過ちを、周りの人たちが許すことはない。何よりも自分自身がその過ちをずっと後悔し続け、心が鎖で締めつけられる(Chained Echoes)

しかし、成長は成功と失敗を積み重ねた先にある。

再び立ち上がるために必要なことは、自分の過ちを受け入れ、変わろうと決意することだ。

そして、1人では立ち上がることはできない。

立ち上がるためには周りの人が、手を差し伸べてセカンドチャンスを与えることも必要なのだ。

このゲームのストーリーは、一貫してそのメッセージを伝えている。

@hirotoarakawa
フリーランスのUI/UXデザイナー。ポッドキャスト『たまにデザインFM』を配信中。マンガと映画が好きです。