小規模なデザインチームがデザインオペレーションとデザインシステムから得られるメリット

hirotoarakawa
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Config2023で行われたセッション『Bigger isn't always better: How small design teams can benefit from systems and ops』の自分なりの翻訳・要約をメモ。

※動画『Driving change with design systems and process - Matt Gottschalk, Aletheia Délivré (Config 2023)』の中の1つ目のセッション。(2:46から開始)

小規模なデザインチームの課題

あなたは以下の課題に共感しますか?

  • デザインの影響力(Design influence): 小規模なチームのデザイナーは、エンジニアよりも人数が少ないことが多いため、デザインの意思決定と影響力が低くなりがち。

  • 時間の制約(Time constraints): 複数のプロジェクトを同時に抱えていると、余裕を持ってデザインを考える時間が取れない。また、燃え尽き症候群(退職のリスク)が高まる。

  • 生産性(Productivity):重要なスキルとプロダクトの知識を持つキーパーソンに、生産性が大きく依存してしまう。

小規模なデザインチームが、よりデザイン主導のアプローチを行い、よりビジネス上の価値を提供して、よりチームの規模を拡大していくためには、これらの課題を克服する必要があります。

私たちデザイナーが提供できるビジネス上の価値の主な指標は、「顧客体験の向上(CX)」や「顧客エンゲージメントの向上」「コンバージョン率の向上」などですが、それを提供するためには、どのような環境が必要ですか?

それは、ファシリテーションやアラインメント、プロダクト戦略の形成、ユーザーリサーチによる仮説構築などを行うために、プロダクト開発の上流からプロダクトメンバーと議論したり、ワークを行う「時間」が必要です。

しかし、小規模なデザインチームのデザイナーは、デザインプロセスの終盤、(アイデアの発案、プロトタイピング、プロダクト開発とリリース)の段階に多くの時間を費やしており、時間を確保することができません。

多くのデザイナーにインタビューしてきましたが、これは本当にどのデザイナーにも当てはまっていた問題です。

「プロジェクトの締め切りが非常にタイトで、時間がなかった」

「私の会社には私一人のデザイナーしかいない、もっとリサーチをしたいけれど、時間がない」

繰り返し聞かれる言葉は「時間」です。

ちなみに、退職の主な理由の1つでもあります。

デザインオペレーション(DesignOps)

デザイナーがより多くの時間を持てるようになるためには、現在、何に時間を費やしているのかを理解する必要があります。

また、ツールと自動化、ワークフローの最適化、コラボレーション方法とコミュニケーション方法など、新しいプロセスやツールを導入して効率を改善できる機会があるか、検討する必要があります。

「時間」をKPIとして、調査を始めるのも良いでしょう。

これらは、デザインオペレーション(DesignOps)の領域です。

より早い段階で、デザインオペレーションを専任で行うポジションを検討することをおすすめします。

今の環境をデザインオペレーションで改善するには?

  • プロダクトチームの統合(Product team integration):デザインプロセス、JIRA ワークフロー、コーディネート

  • 効率化されたリサーチ(Streamlined research):参加者のプール、テンプレート、リサーチツール

  • フィードバックループとスキル(Feedback loops & skills):批評とフィードバック、ファシリテーション、ナレッジシェア

その中でも、大きく時間を節約できるポイントになるのは、デザインプロセスの改善... 「デザインシステムの構築」です。

デザインシステムの本当のメリット

一般的にデザインシステムのメリットは「デザイナーとエンジニアの連携」「デザインの統一性」「開発生産性の向上」と言われています。

しかし、「デザインの仕様策定を伝えるドキュメント作成」や「新規コンポーネントの作成」などの時間を費やす工程を省くことができ、デザイナーがプロダクト開発の上流からワークを行う「時間」を確保することができる点が、デザインシステムの本当のメリットです。小規模なデザインチームにとって、これらの活動に集中できる時間は、非常に貴重です。

必要なデザインシステムは、企業によって様々です。例えば、単なるFigmaのコンポーネントライブラリである場合もあれば、コード化されたライブラリの場合もあります。

とにかく、デザインシステムを最速で構築して運用し、自由な時間を確保することが大切です。

交渉

しかし、デザインシステムを構築するためには、専任のデザイナーのアサインやリソースなどの投資を必要とするため、組織内で賛同を得るのが難しい場合があります。

私の場合は、デザインシステムを構築することによって省ける時間(Wasted days)を見積もり、交渉を行いました。

デザイナー、エンジニア、テストエンジニアが、2週間のスプリントで行っている普段の作業時間に基づき、省ける時間を計算すると、デザイナーは3日、エンジニアは2日、テストエンジニアは0.5日でした。

さらにこれらを、1年間で計算すると、合計約110日間分の省ける時間があることがわかりました。(※デザイナー:1名、エンジニア:2名、テストエンジニア:1名の合計)これを金額にすると、約40,000ポンド(約800万円)になりました。

これは、非常に説得力のある交渉材料になります。

まとめ

まとめると、小規模なデザインチームを成功に導くために、デザインオペレーションとデザインシステムは非常に重要です。

まずは、なぜあなたのチームが発見とリサーチに集中する時間が少ないのかを理解するところから始めるのをオススメします。

そして、デザイナーが価値を提供するための時間をより多く持てる環境を作るための方法を見つけてください。

@hirotoarakawa
フリーランスのUI/UXデザイナー。ポッドキャスト『たまにデザインFM』を配信中。マンガと映画が好きです。