ビッキー

hiruyu
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今朝ビッキーのことを思い出した。 お母さんとお父さんが建てた家についてる庭が君の専用エリア。その庭が見える大きな窓を開けると、音を聞きつけては駆け寄ってきて、キラキラした優しい瞳で私のことを見上げてくる。外で飼っていたから身体の毛は少し硬い。でも頭と、特に耳がふわふわしていて、撫でるといつもしっぽを振ってくれていた。庭でバーベキューをする日はなんだか嬉しそうに見えた。帰宅して、いつものように駆け寄ってこないから見に行くと赤ちゃんを産んでいたこともあったね。あの家で暮らしていた頃、君が唯一の拠り所で支えになっていたのに気がつくことができなかった。ごめんね。

君の溢れんばかりの好意と優しさが詰まった瞳を思い出す度に申し訳なくて、でも大好きで、愛しくて、悲しい。あの日報告を受けて何年かぶりに入った庭で、君は横たわっていた。カチコチに固まっていて、まるでレプリカみたいだった。触れると冷たくて、だけど変わらず頭と耳はふわふわしていて紛れもなく君だった。なのにいつもの瞳で私を見てくれなくて、君がもう二度と戻らないと理解した。今までどれだけ君の存在に助けられていたか、こうして振り返ってはその遅すぎる自覚に後悔ばかりを積もらせていく。 もう一度あたたかい君を抱きしめて、撫でて、散歩して、大好きだよって伝えたい。あの頃は私が1人で君をつれて歩くには私の身体は小さすぎたけど、私大きくなったから今なら好きなだけ君と歩けるんだよ。

あの家は、あの庭は君にとって良い場所だっただろうか。私は苦しかったけど君との時間は幸せだったよ。あの庭に君がいてくれたから私は今日を迎えられているんだよ。家にきてくれて本当にありがとう。

あの家にはもうだれもいない。庭にも、君を繋いでおくためのリードや小屋はもう撤去された。君がいたことを証明できるものはなにひとつない。

私は今東京にいる。東京でもこうして、夢で君をみる。かわいいね、いいこだね。大好きだよ。