前提としてメインストーリー第2部まで(可能であれば2周年イベストも)読了推奨。時系列が明確に第2部後というだけではなく、第2部のストーリーで詳らかになった内容(有体に言えばネタバレ)も出てくるので。とはいえ、ストーリーを読む順番は自由なので先にイベストを読んで後からメインストーリーを読んで「あそここの話だったんだ!」と思うのも悪くないのかも。
過去のイベントストーリーの中で特に直接的に関連性があるのは下記4本。
『星降る空のメモワール』(1年目七夕)
『眠れぬ夜のカンペッジオ』(2年目夏休み)
『白雪の終着に愛を響かせ』(4年目クリスマス)
『花の夏夜に旅立つきみへ』(4年目夏休み)
あと4周年イベストも推奨かも。他者に執着する北の魔法使いの末路という意味で、ミアはバルタザールのIFでもある。畢竟、ミアのブラッドリーへの執着を“恋”と定義づけるなら、バルタザールのシャイロックに対する執着もまた“恋”と定義づけられなければおかしい。(そもそも“恋”というラベルが適切かはまた別の問題だけど)
メモワールのオリヴィアについてはノーチェ10話で言及されている。メモワール本編では作劇上「都合の良い女」だったオリヴィアが、「北の魔法使いにとって恋は命懸け」というテーマで語り直されることで、北で生き抜く矜持と強かさを持つ魔法使いとして再定義されている。オリヴィアは恋の相手とギブアンドテイクの駆け引きを楽しんでおり一方的に都合よく搾取される存在ではないことはメモワールの中でもギリギリ読み取れるものの、ストーリー上“都合の良い女”という役回りを課せられていたのは事実なので…。その“都合の良さ”を反転して、駆け引きが得意で強かな魔女であると捉え直されていたのは大変良かった。(それはそれとして「ブラッドリーなら許されるだろう」という空気で「女とセックスできる男らしさ」を出してくるのはどうかと思うし、ミアを男性にして同じ話してみろよという批判はされるべき)
北の魔女、総じて魅力的なキャラクターではあるがジェンダーバイアスがかかりすぎている面もある。そもそも“魔女”という有徴の呼称使うのがどうなのかという話ではあるが。
もっと言えば、対人のロマンティック・ラブの話になると異性愛しか描かないのはまほやくの残念なところだなといつも思う。毎度異性愛やってないで、そろそろ同性愛の話くらい真剣に描きなよ…。
一方で、10話の「理解できなくても、誰が否定しても、わたしはあなたを否定しない」という賢者の語りがとてもよかった。第2部を経た賢者とブラッドリーの対話が秀逸。
白眉だったのはミチル周りの描写で、看板イベントである『花の夏夜』ですら成長過程のもどかしさが痛々しかったが、今回はミチルの成長について丁寧に描かれており、ミチルの成長譚という意味で重要なイベントになっていた。
細かい点で引っ掛かりはあるものの、イベントストーリー自体は本当に良くできていて、ちょっと詰め込みすぎだとは思うけど、2部後のシナリオとして力が入っていて良かったです。(本筋の感想は別途書くかも)