連作『祝祭の庭』(二次創作短歌)

樫井/shiori
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『逆転裁判』の二次創作短歌の習作です。連作の練習がしたかった。テキスト版は下の方にあります(しずかなインターネット、ALTを入力しづらい、とても)。

あらかじめ懺悔しておくと、さいきん勉強のためザクザクと歌集を読んでおり、作り終わってからやっと榊原紘さんの『koro』に引っ張られすぎてる!!と気づきました(作ってる時は気づかないものなんだな…)。『koro』には逆転裁判・大逆転裁判を詠んだ「果報は奪う」「大逆転」という連作が所収されており(どちらもとても良かった)、そちらにも当然のように引っ張られているんですが、それ以前に、

ぐちゃぐちゃにミルクパズルを崩すほどきみの退路を断ってあげたい

榊原紘『koro』

という一首があり、後から読み返したときに気づいて「完全に無意識だったのにモロすぎる…これがパk…類想歌…」と動揺しました。という事情でアップするのをやや躊躇っていたのですが、10首目を作りたくて作ったので変えようがなく…初心者の習作なのでゆるされたい…。しかし、歌集を読んでinputしないと上達しない気がするんだけど、歌集を読めば読むほど心には残ったまま歌を忘れて(記憶力が悪い)無意識に摸倣してしまうのでは?というような懸念が生じた。閑話休題。

というわけで以下、画像のテキスト版。

『祝祭の庭』10首

1.祝祭の庭に降り敷く紙吹雪 きみの悪夢は攫っていくよ

2.冬庭を流れる風の足跡にクラバットの襞《ひだ》を懐かしむ

3.花なんか見分けもつかなかったけど、似てる気がして覚えた椿

4.面影は春泥となり靴底に残るだろうか拭いきれずに

5.その胸にひらめく白を思わせるバラの名前を手帳に挟み

6.夏の夜のきみを足止めするための言い訳として遠雷を聴く

7.晴天にひまわり翳り立ち尽くすあの日のぼくの影画のようで

8.(千秋の恨事《せんしゅうのこんじ》と思い知れ)ぼくの死を看取るのはおまえだからね

9.復活祭《パスカリ》と云う名の薔薇が出来過ぎた冗句みたいに似合う男と

10.切り花は切り戻すほど濃く光る きみの退路を断ち切らせてよ

一応6後のなるほどくんが1からの過去を振り返りつつ御剣に激重感情をぶつけるという設定。6までを踏まえた原作の2人の関係性は友愛(ないしはクワロマンティック的)と思ってるけど、それはそれとしてもう法律婚はすればいいとも思っている(双方ともあの世界において同性婚の法制化を目指して活動していてほしい)。10首目は、法廷では追い詰められて輝くなるほどくんが私生活では追い詰める感じだと嬉しいな(私が)というものです。ざっくり言えば「極めてAro的な同性愛」なので、広義のBL短歌というやつかも。

作歌についての覚書。10首目から作り始めて「いやでもひまわりとチューリップしか名前わからない人は切り戻しとか知らんよな…」と思ったので、切り花を買うような人にするための導線として9,5,3,2と遡って追加。どうせならあと5首足して連作というものにしてみるかと考え(連作は10首くらいあるものという思い込みがあった)、冬(1の5話と3の5話)からスタートして秋(6の特別編)でゴールするイメージで穴埋め。穴埋めで作った歌は緩急をつけたくて原作からやや遠めにしてみたり。途中で3首くらいボツにしました。最後までグネグネ悩んでいまいち決まらなかったのが1でしたが、法廷を「裁きの庭」と呼ぶのがかっこよくて好きなので(バンジークス卿もさることながら、昔のオンリータイトルだった印象が強い…)「庭」を使い、原作を知ってる人には「無罪」のアレだなとわかって貰えることを期待しつつ、知らない人が読んでもなんかのパーティなのかな?と思えるあたりを狙ってみました。しかし振り返ると全体的にメリハリがないな…。難しい。

明かそうとしなければ性別が特定されないのが短歌のいいところだと思うんですが、明かさないと異性愛として誤読されがちなのが短歌の悪いところなので、9首目の「男」は敢えて「異性愛とは読ませねーからな」の念押しとして入れました。連作にするとこういう念押しができるのは良いな。

自分の反省はさておき『koro』は良い歌集だったのでおすすめです。贖罪もかねてリンクを貼っておく。

以下は余談。

これまで和歌や短歌にあまり親しむことがなかったんですけど、その最たる理由は「異性愛規範がキツそう」で、すこし勉強し始めた今も「実際キツいよな〜」と感じます。しかし二次創作の手法として考えると、思っていたよりずっとクィアな読み/詠みができるジャンルなのかも…とわかりました。クィアリーディングの可能性を追求しつつ、新しい趣味のひとつとして楽しく接していけたらいいなあと思います。

@hito3ji
とりとめもない。試運転。アプリゲーム『魔法使いの約束』の話題が多め。