全3冊でお送りしてきたシャーロック・ホームズVSクトゥルフの神々もいよいよ完結編です。血気盛んな若者から始まった物語も、老成して養蜂の研究をする引退後の探偵の時代にたどり着きました。
今回は海の話です。クトゥルフといえば海ですからね。
以下、ネタバレを含みます。完全にネタバレです!
面白いは面白いけどこういうことじゃないような……!?
これまでの作風と打って変わって少年漫画の中盤~終盤のような展開になってしまいました。ネームドキャラが次々派手に亡くなっていく展開が必要だったのでしょうか? いえ、必要か必要でないかでいうと、起こってしまったことは起こってしまったことなので必要かどうかとは関係ないんですが。
ええと、とにかく人間には希望が必要ということで……希望の火を燃やしつづけることができればそれで充分らしいです。がんばっていきましょうね。
といっても、期待ハズレだったのかと問われると、そうではありません。なぜなら巨大化した邪神ジム・モリアーティ元教授と、復活した邪神クトゥルフご本尊様が、大地を破壊しながら物理的に戦う絵面は面白いに決まっているからです。白石晃士監督作品かと思った。バケモノにはバケモノをぶつけるんだよ!ということですか?
気の利いたトリックとか、小粋な皮肉とか、ホームズからワトソンへの信頼とか、割とどうでもよくなってしまった。大オチはそこまで好きじゃなかった。いや、コズミックホラーで一本筋を通していただけたら納得のオチなんですけど、ここまで道中をぶっ飛ばしたら、瓦礫から若返ったモリアーティと若返ったシャーロックが這い出てきて海の上をサーフボードに乗って追いかけっこするとかでもよかった気がします。そうですか? 私は本当にそんな光景見たいんですか?
三作を通して、魔法が体系的に整っている世界観と、物事を論理的に考えるシャーロック・ホームズは、意外と相性がいいのだということを知りました。また一つシャーロック・ホームズの魅力を発見してしまいました。
さて、皆さんは原典シャーロック・ホームズの冒険こそが真実だと信じるでしょうか。それとも、この度提示された新事実、クトゥルフの神々との戦いこそが真相だと思うでしょうか。
三部作を通して読んで、私は原典こそが真実だという結論に達しましたが、書かれている感情が本物なら取り巻く物語はどうあっても正解なのかもしれません。