二つの推理小説が織りなす奇妙な相互作用、書籍版ではくるっとひっくり返すともう一方の小説が読める形になっているようなんですが、なにぶん電子書籍なので単なる前後編として楽しみました。
簡単にいえばイギリス編とアメリカ編です。以下、ネタバレを含みます。
イギリスのエセックス編は細長い医師シメオン、アメリカのカリフォルニア編は元気な若者ケンが主人公の推理小説。
話としてはエセックス編の方が正統派怪奇探偵小説っぽくて好きでした。でも登場人物はカリフォルニア編の方が好き。どのくらい好きかというと、半尺の小説なのに好きな登場人物が被害者になってしまってしまって悲しい気持ちになったくらい。
どちらも被害者が秘密を持っている、という部分が共通しているこの二編は、切っても切れない関係にあります。医師シメオンがいい人である理由がカリフォルニア編に隠されていたり、ケンに似た謎のかっこいい探偵がエセックス編に登場したり。また、あるはずのないアメリカの景色がエセックス編の絵画に描かれていたり、カリフォルニアにエセックス編と同じに名前の人物が登場したり。
蓋を開けてみればその理由は簡単ですが、どちらかというとカリフォルニア編がエセックス編のネタバレといった形になるので、カリフォルニア→エセックスの順番で読むと寂しい気持ちになるかもしれません。私がエセックス→カリフォルニアの順番で読んだからこう感じるのかもしれませんが。
核となる大きな要素としては、発展していくアメリカを覆う優生思想という影への反抗でしょうか。大きなテーマとしては、『過去が自らの意志を持つ、それは弁明、あるいは報復』という話。好きな登場人物はオリヴァー。