面白すぎました。
暴力、性被害(被害者に男女を含む)、PTSDや精神的トラウマなどの要素が物語の重要な要素として扱われていますので、不安がある方は読書前にご考慮いただきたいのですが、そうでない方にはおすすめです。
戦争で重大な負傷を負ったアクランド中尉。目覚めた先の病院で、彼は極端な女性嫌悪に陥っていた……
……という導入と、三人の男が殺される猟奇殺人がどう絡んでくるのかが見どころのミステリー小説。
割と早い段階で真犯人はわかってしまったんだけど、事件と本人自身の謎を抱えるアクランドの行く先が予想もつかず、不安定さに共感しながらずっと読み進めてしまう。
そしてかなり重要なメインキャラに、身長180cm越えでムキムキでマッチョでタフで頼れて賢くて人を気にかけてくれるレズビアンの女性の医者がいる。
こ、こんな夢みたいな存在が現れてしまっては何もかも解決では!?と思ってしまったけど、身長180cm越えでムキムキでマッチョでタフで頼れて賢くて人を気にかけてくれるレズビアンの女性の医者だって実在する可能性は十分あるし、夢みたいというのも失礼かもしれない。というか私が会ってみたいよ……ミステリー小説ってたまに夢みたいな存在がいる。人の記憶が視える薔薇十字探偵とか。
そして夢みたいなジャクソン医師がいても根深い問題は夢みたいには解決しない。直接の探偵役ではないけれど、甘やかすことなく突き放しながら、排他的な人にも根気よく話を聞く彼女がいることが、事件の解決に繋がったんだと思います。
いろんなことの真相が徐々に明らかになりつつ、一番最後に誰が殺人事件における直接の探偵役だったか(事件の概要を察して、それに基づいた行動をしていたか)がわかる構造になっていたのが面白かったです。
以下、ネタバレ。
最後、深い傷を待つ人がよく笑うようになって良かった。かなり内面の戦いの話だった。反面、こっちはこんなんなる前に誰にも助けられなかったのか? という人もいて、虚しい。
鋭い洞察で人間社会の暗い部分が描かれているから胸を掻きむしられる小説だけど、敬意や信頼の捉え方に希望が持てるし、助かってほしい人の命が助かる話だから後味はいい。重度糖尿病を抱える浮浪者の少年とか。