カメレオンの影を買ったらオススメに出てきまして、レコメンドに促されるままスーッと買った本なんですけど、これも面白かったです。
イギリスのカンブリア州のストーンサークルで、凄惨な儀式的連続焼殺事件が起こる。ほどなくして、とある理由で停職となって隠居する警察官ワシントン・ポーのもとになぜか連絡が寄越された。なんと焼死体に彼の名前が刻まれていたのだ!
……という出だしのお話。話の運び方がかなりBBC等のドラマっぽい。順序立って書かれており、視点がぶれたり時系列で混乱したりすることがほとんどないです。
登場人物もキャッチーで、ハリー・ポッターのような眼鏡をかけたギークの若手天才分析官の女性ブラッドショーという、人によってはこれだけで読むしかないという気持ちになる登場人物も出てくる。
この下からネタバレを含みます。
私この犯人好き!
最初は「被害者の陰茎を切断するくらいのフックではもうビビりませんよ」と猟奇殺人事件小説への余裕を見せていた私ですが、終わってみれば一転し、「フックというか”流れ”だったな」と別の余裕を見せるに至りました。よゆうよゆう。
と言っても終始余裕だったわけでなく、八割くらいまで読んだときには沈痛な気持ちになっていました。九割くらいから元気が出てきて、オチを見た時にHAPPYの感情を得ながら走り出しました。
そう! 私! こういう犯人がこうなるの好き! つまりネタバレすると……なんだかんだ言っても……この手の不幸な過去があった人が目的を達成するのやっぱ好きですね! 生き残ってありがとう、ただしこれ系の作品は続編でドラマティックに急死することもあるから油断ならない。今は考えないことにする。
全体としては、ポーが停職になった理由、いじめを助ける描写など、ちょっと引っかかる部分もちゃんと犯人が探偵役としてポーを選んだ伏線になっているのと、真相の物理的なヒントが懇切丁寧に本文に配置されているのとで、作品としてきれいにまとまっている印象を受けました。
あえて難点を上げるとしてはきれいにまとまりすぎていてほんとにドラマを見ているような気分になる(小説として没入できない)ところでしょうか。終盤の犯人と対峙するシーンとか、長台詞よく噛まずに言えるな…って思いながら読んでました。
しかしほんとにオチがすばらしい。楽しい気分になるというサプライズをもらえた。うれしいです。