今週の『虎に翼』で印象的だったのが、戦時中に今の憲法は存在しないと被告の国側の国際法学者が言った時、原告側弁護士のよねが「原告は今を生きる被爆者ですが」と強い語調で言い、そして裁判官(寅子)もアメリカにも国にも賠償責任を求められないのであれば、「今苦しんでいる被爆者はどこに助けを求めればよいとお考えですか?」と問うた場面だった。よねも寅子も「今」生きている、「今」苦しんでいる人々に対して、見ないふりをしたりいなかったことにすることは決してできない。
今日の新聞折込に、原爆投下時の黒い雨体験者に対する巡回相談会のチラシが入っていた。ちょうど今日の『虎に翼』では、原爆裁判の判決が下された。この判決により、被爆者に対する援護施策が始まるきっかけとなったのだが、今なお、広島では黒い雨の降雨範囲が拡大してもいまだその範囲外にあるケースや、長崎では被爆者と認定されていない「被爆体験者」に対する被爆者の認定については、原爆裁判の判決から60年以上経っても解決していない。これらの救済について、例えば黒い雨の範囲拡大による被爆者認定について見ると、原爆投下当時に黒い雨降雨地域となった場所にいたという証明、放射能の影響によると考えられる病歴や症状についての医者の診断書が必要で、しかも遡及は無いため、申請時点で本人が存命している必要がある。長い年月が経ち、既に故人となった方も多い。しかし、こういった方々を、たとえ救済は叶わなかったとしても、いなかったことには決してできないししてはならないだろう。
そういえば、これまで『虎に翼』では、寅子は将来に託したり先延ばしにするのではなく「今」辛い思いをしている、「今」苦しんでいる人々のために「今」解決しなくてはならない問題なのだという怒りを顕にすることが多かった。穂高に対する一見異様なまでの怒りはそういうことだったのかと、今週の放送を観てようやく腑に落ちた。