あちこちでキンモクセイの花が咲き、強い芳香に秋を感じながら、ふと、以前使っていたある路線のある駅前にあったギンモクセイのことを思い出した。写真などでは無く、直接ギンモクセイの木を目にしたのはそれが初めてだったように思う。葉はヒイラギのように尖っている。キンモクセイより花の香りが控えめなので、この季節、木の側を通り過ぎる際にほのかに香る芳香に、初めてそこにギンモクセイの花が咲いていることに気が付いて思わず笑顔になったものだった。花の咲く時期が来るのが毎年楽しみだった。
しかし、このギンモクセイの木は今はもうその駅には無い。去年まで行われていた駅の改装工事によって撤去されてしまったのだ。ギンモクセイの木の隣にはソメイヨシノの木があり、春はソメイヨシノ、秋はギンモクセイを楽しめるちょっとしたスポットだったのだが、こちらの木も撤去されて、その場所は数か月前に見た時には駅前広場の一角としてアスファルトに覆われていた。私もこの駅に立ち寄ることがほとんど無くなったため、ここ最近の状況は分からない。ギンモクセイは移植を嫌うらしいが、それでも別の場所に移植などされて、今年もどこかで花を咲かせ良い香りを漂わせていればいいなと思う。