ドラッグストアで米津玄師の「さよーならまたいつか!」が流れていた。この曲を聴くと、反射的に『虎に翼』がリンクする。オープニングの寅子たちの姿だけでなく、ドラマで提示される現代にも通じる問題点についてまでもが思い浮かぶ。ヘアケア商品の前で、髪とは全く脈絡も無い考えに耽ってしまった。
他人の前で、あえて家族のことを、夫が妻を、妻が夫を、親が子を下げる言い方をする。これらのほとんどは謙遜、もしくは照れから発せられているものだ。それは分かっているけれども、下げられた方にとっては、どうして自分が貶されなければならないのかとモヤモヤとした気持ちで一杯になる。スンッとなってしまう。いくら言った側の相手の自分に対する愛情が深かったとしても、それは想像以上に心と尊厳が傷付けられるものなのだ。
このことは、現代であれば、状況によっては悪質なモラルハラスメントに該当する場合もあるのではないか。『虎に翼』で、梅子は夫と離婚するため、更には息子たちの親権を得る方法を模索するために法律を学んでいると、寅子たちに打ち明けた。梅子の夫の梅子に対する言動は、ドラマ内では男の甲斐性として多くの男性たちからは持ち上げられているが、当時であっても女性たちから見れば「はて?」である。今であればまさにモラハラだろう。
それはさておき、梅子が法律の知識を得て離婚と親権の取得を訴えたとしても、女性にとって不利な法律の壁はまだ厚く、よねも言っていたように、思い通りの結果にならない可能性が高い。しかも訴える相手は弁護士である。しかし梅子は「それでもやらないといけない」ときっぱりと言った。声を上げ、諦めず学び行動し続けることで、将来への変化の糸口へとつながるかもしれない。何と言っても、ともに学ぶ心強い仲間たちがいる。
梅子もまた、女性の法律上における不合理に対して一石を投じ、道を開こうとする開拓者なのだ。