以前、『虎に翼』で、アメリカから帰ってきた寅子が着ていた服はむしろ花江の方が似合うのではないかという意見をSNSで少なからず見かけた。そうかもしれないと私も思った一方で、寅子が好んで実際に着ている服と花江に似合いそうな服とは本来別物として語られるものだろうとも思った。それに、ドラマでは言及されなかったけれど、花江自身の好みも当然あるはずだ。もし、好きな服を自由に選んで着ていいよと言われたなら、まさかこの人がこの服を?と誰もが驚くような思いもよらない服を選ぶかもしれない。
着たい服と言えば、男性もいわゆる「かわいい」服が着たいというポストを見かけた。これも先の話と同様、かわいい服を着る、というより着るべきなのは子どもや若い女性というイメージが強く、流通している服も性別や年齢、外見の特徴と言った固定観念に囚われたデザインのものもまだまだ多いように思う。中高年になってもライブTシャツを着るのはおかしいという話題が半ば炎上したのも根本は同じだろう。自分の着たい、あるいは着ている服がいわゆる社会通念や固定観念から外れているとされる時、似合わないと笑われたりからかわれたり、らしくないと好きでもない色やデザインの服を勧められたりする。らしいか、らしくないかは、もちろんTPOを考慮することも必要な場面もあるが、本来自分自身で決めるもの、決めていいものであるはずだ。
さほどファッションに強いこだわりがある訳では無いけれど、周りの人から絶対似合うと言われても、自分でもきっと似合うだろうとは思っても、それでもやはり好みに合わない服は着たくない。他人の「あなたはこれが似合う」という言葉に、自分でも気付かなかった魅力を見つけることも確かにあるだろうけれど、好まないものに対して無理をしてまで自分を合わせるのはやはり苦痛でしかない。