朝夕はすっかり涼しくなった。しかし昼は相変わらず真夏のような暑さだ。近所で買い物をするため外出した時、うっかり日傘を持って行くのを忘れてしまい、1分も経たないうちに後悔したけれど、引き返すのも暑いということでそのまま店に向かった。買い物を終えて店から出た時、再びしまったと思ったが、もう帰るだけなので、日陰から日陰を忍者のように高速移動(自分自身の中ではそのつもりで)しながら帰ってきた。帰ってから冷えた麦茶を飲んだ。真夏のような気持ちで飲み干そうとしたが、ちょっと冷たすぎると感じて、ふた口くらいで一旦止めた。9月末、意外と秋は近くにいる。
『虎に翼』の優未の生き方について、最終回後もしばしば考える。結局優未は何者にもならない、けれど何者にでもなれる可能性がある道を選んだ。確かに実家はしっかりしている。ただ、それだけでは無い。優未が生きやすい人生を選ぶに当たり、寅子や家族、そして自分自身と向き合い、時にはスンッとしたり衝突したりしながらも、最終的には周囲の理解を得られたのも大きいだろう。周りの人たちも優未の言葉にきちんと耳を傾け、決して「こうするべき」「こうあるべき」を押し付けなかった。そういえば、『虎に翼』において、結婚に関しては優未だけに限らず、最初の寅子のお見合い以外は、本人の意思を無視して周りが結婚あるいは再婚を勧める言葉をかける場面はおそらく無かったはずである。
『虎に翼』は、一部には寅子という地獄の道をあえて選びそれを喜びとできるような強いヒロインによる押し付けがましく説教臭いドラマのイメージがあったようだけれど、実は逆で、相手に押し付けない、相手を決め付けない、それらがことある毎に言葉を尽くして描かれていたと今改めて振り返って思った。