2024年11月22日(金) ハン・ガン作品を初めて読む

homachimaru
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公開:2024/11/22

ノーベル文学賞受賞の報を聞く前から、Blueskyやしずかなインターネットでハン・ガンの名前と作品の話題を見かけることがしばしばあったので、いつの間にか頭の片隅で気になっていた作家であった。とは言え、それほど積極的に読んでみようという訳でも無く、機会があれば読んでみたいという程度の認識だった。その後、ノーベル文学賞を受賞されたことで大きな話題になってからは、ハン・ガン作品を初めて読むなら『すべての、白いものたちの』がおすすめだという投稿や書評をよく目にするようになった。私も最初に読むのはこの作品だろうと、内容も作家のこともほとんど知らないのに何となく確信に近い気持ちでそう思っていた。

しばらくして、そのことを忘れかけた頃、谷川俊太郎の訃報に接し、その翌日の仕事帰りにふと谷川俊太郎の詩集が読みたくなり、わざわざ遠回りしてある書店に立ち寄った。書店内を巡っていると、ハン・ガンのコーナーがあった。そういえばこの方の作品を読んでみたかったことを思い出した。まず目に留まったのが、個性的な装丁の『ギリシャ語の時間』だった。その隣に『すべての、白いものたちの』があった。両方購入しようかとも考えたが、現在は積読を少しでも減らすべく、すぐに読む本だけを買うことにしている。そういう訳で、今回は『すべての、白いものたちの』のみを購入した。

電車内で早速『すべての、白いものたちの』を読み始めた。読んでいると、淡々とした描写なのに、言葉や文章の一つ一つが様々な白いものたちを通して読む者の心に強く刻み付けられているような印象を受けた。実在風景と心象風景、すぐ側にあるものと手の届かないところにあるもの、生者と死者が垣根を超えて融合したような世界に不思議な感覚を覚えた。昔であれば、おそらくとても近寄り難く苦手なタイプの作品と作家だったかもしれない。今でも読んでいて多少心にざらつきを感じる部分もあるのだが、歳を重ねたからか、むしろそこに共感さえ覚えることに少し驚いた。