毎日『虎に翼』を時には面白く、時には興味深く、時にはいろいろ考えさせられながら観ている。ただ、それはそれとして、特に新潟から東京に戻ってからの寅子の、裁判官としての仕事がほとんど描かれていない点がどうしても心に引っかかっている。先週、雲野が原告側の弁護士としていわゆる原爆裁判が提訴した場面があったが、今週に入ってから今日まで、それには一切触れられないままである。
原爆裁判は提訴が昭和30年(1955年)、口頭弁論が始まったのが昭和35年(1960年)、判決が言い渡されたのが昭和38年(1963年)のことである。一方で寅子のモデルである三淵嘉子が再婚したのは昭和31年(1956年)のことである。本格的に裁判が始まるまでにはもうしばらく年月があるため、その間に別の話がメインに挿入されることは特に不自然とは思わない。婚姻も法律行為であり、これまでも寅子は結婚に対する疑問を自身に問い続けているところも最初から一貫している。
しかし、違和感では無いが、ドラマに対して私が重点を置いていた部分とドラマが重点的に描こうとする部分とに、いつの間にか大きなズレを感じることが増えてきた。最初はそのズレに対して自分の方がドラマに寄せる事で溝を埋めていこうとしていたのだが、何だかしんどいしズレは大きくなるばかりだった。ノットフォーミーとまでは行かなくても、一度そういう感覚に陥った場合、やはり適度に距離を置いたほうがいいのかもしれないと思った。