20240205 にわか源氏

ホンスミ
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 まったくのにわかで、しかもミーハーで恥ずかしいのだが『源氏物語』を読む。角田光代による現代語訳。河出書房新社の池澤夏樹編集「日本文学全集」のなかの一冊。刊行当初に買ったのだが、ずっと積読。誠に申し訳ございません。

 並行して与謝野晶子訳の『紫式部日記・和泉式部日記』(角川ソフィア文庫)も読んでいる。そこに収録された「紫式部考」という晶子の論文に〈私の想像では、源氏物語は「桐壺」から書かれずに弐巻の「帚木」から書かれた。〉とあって、驚くやら、なるほどと納得するやら。

 定説になっているのかどうかはともかくとして、「書かれた順番」という視点はなかったので、目から鱗が落ちる思い。「桐壺」が、光源氏の生い立ちにフォーカスした「総序」として書かれたのだとしたら、他の帖と比べて幾分雰囲気が異なるのも理解できるような気がする。

 あと、桐壺が病をえて実家に帰る場面。与謝野訳では「更衣」で通してるが、角田版ではその場面から以降、「女」と表記が変わる(すべてではないが)。「桐壺」はあくまで「部屋」の名前。だから、そこから移動してしまうと名もなき「女」となってしまう。おそらく角田さんは意識的に訳し分けてると思う。宮中の女性たちの悲哀をいっそう感じさせる訳になっている。さすが。

@honsumi
ネコを飼ったことはありません。