源氏物語「薄雲」の帖を読む。
角田光代訳には巻頭に〈この年は凶兆を示す天変地異が多く起きたと言われています。それもこれも、あの秘密が明かされる時だとの警告かもしれません〉とある。その意味では、とても不穏な空気に覆われている帖。
その象徴ともいえるふたり。ひとりは明石の御方の姫君。あの世とこの世の境界を越えて、いよいよ二条院へと入る。そして姫君と入れ替わるようにして、この世とあの世の境を越えていく藤壺。そして大いなる秘密がついに明かされる。
なんともドラマチックな展開。当時の読者も、続きが気になって仕方なかったのではないか。姫君は、光る君にとって「黄泉からの使者」なのか?
それにしても藤壺の死がなんとも悲しい。知らず知らずのうちに、藤壺に感情移入していた。まさか古典のキャラにここまで感情入するとは、思いもよらなかった。自分でも驚く。