サチさんは、自分が死んだら葬式もしなくていい、骨もすべてどこかに撒いてくれという。「ちょっとぐらい残しておいてもいいかな?」と聞くと、それもダメだと拒否する。すごいな、と思う。そこまで言い切れるのはすごいと思う。でも本当にそうなってしまったら、こっそり残しておくけどね。
『ミケランジェロの焔』読了。死を目前にしたミケランジェロの恨み節が炸裂していて、いちいち痛快。恨み言を重ねつつ、その偉業を知らしめる著者の力量に感服する。著者は美術史家でもあるらしい。だから説得力がある。恨む相手が教皇様だったりする。スケールがデカい。
ルサンチマンは往々にして優れた書物となる。私淑するH先生によると『論語』は、孔子の恨み節なのだそうだ。有名な〈子曰、「吾十有五而志于学。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。六十而耳順。七十而従心所欲、不踰矩」〉の一文。なにゆえ七十までしか言及していないのか。孔子は、七十四歳で没したからである。