20240118 辻潤という男

ホンスミ
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 昨日は大杉栄の誕生日だったそう。

 大杉は無政府主義者として知られるが、アナキズムには大きく二種類あるらしい。ひとつは、自分以外のすべてを無価値とする、というタイプ。もうひとつは、人間はもともと群れをつくる生き物なのだから、「国家」に依存する必要が無い、と考えるタイプ。大杉は後者らしい。『黎明 日本左翼史』に書いてあった。

 大杉と言えば、伊藤野枝。彼女は大杉とともに甘粕に殺されるのだが、野枝の先の夫が辻潤で、辻は〈社会に対する極端なまでの無関心〉という態度を貫いた。先に挙げた無政府主義者のタイプでいえば、前者のタイプ。野枝と別れたのちは、ずっと放浪生活を続け、晩年はアパートの一室で餓死した。発見時、シラミまみれだったとウィキには書いてある。

 野枝への恨み節のようなものは、青空文庫で読める。「ふもれすく」。野枝の死後すぐに書かれたものらしい。辻と野枝は、教師と生徒という間柄で出会っている。野枝には当時、婚約者もいたらしい。なので二人は駆け落ち同然のかたちで結婚した。辻は教職を棄ててまで、野枝と一緒になった。

 その野枝を、大杉に獲られた。愛憎半ばする辻の気持ちはわからなくはないが、前妻のことをここまで悪く書かなくてもいいのでは。無政府主義者という以前に、人間的にいろいろ問題があったんじゃないかなあ。辻という男は。

@honsumi
ネコを飼ったことはありません。