20240509 安西水丸『1フランの月』

ホンスミ
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  安西水丸『1フランの月』(小学館)を読む。2014年に急逝した水丸さんの没後十年を期して編まれた遺稿集。表題の「1フランの月」は、1990年に刊行された長篇小説『手のひらのトークン』の続編だった。小説の舞台は1960年代だが、水丸さんはこの続編をいつ書いたのだろう。

 アメリカでの生活をチャラにして、ヨーロッパを転々とする若者の心情を、歯切れのいい、短いセンテンスの積み重ねて描いていく。シンプルな線と鮮やかな色が目を引く水丸さんのイラストのよう。けれども物語の背後には、どこか暗い「影」がある。『手のひらのトークン』が、「戦争」を引きずる人間たちを活写していたみたいに。

 未完だけども、十分に読み応えのある佳品だった。

@honsumi
ネコを飼ったことはありません。