20240415 須磨

ホンスミ
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『源氏物語』「須磨」の帖を読む。

 先の「賢木」の帖の終盤で、右大臣と弘徽殿大后のふたりが奸計をめぐらしていた。それを察してか、光君は自ら須磨へと隠棲してしまう。権力闘争に巻き込まれそうになった上に、葵上の死、藤壺の出家、六条御息所の伊勢下向、などなど、懇意にしていた女性たちとの別れが続き、ちょっと鬱気味となったのか。

 光君はいいが、残された女性たちはたまったものではなかろう。紫の上はひとりぼっちになってしまうし、光君と通じてしまった尚侍の君(朧月夜)は〈参内停止の処分を受け、世間の笑い者となってひどく落ちこんでいる〉(角田光代訳)。

 全体に重苦しい帖だが、そうしたところへ、頭中将が須磨までやってきて、重苦しい雰囲気を和ませてくれる。こうしたキャラクターの配置、登場のさせ方が絶妙に巧い。さすが。明石の入道も登場し、新たな展開への期待感も高めてくれている。

 

@honsumi
ネコを飼ったことはありません。