ゆっくりと
右手を伸ばす
その手を掴めないかと
薄暗い部屋で寝転びながら
ゆったりと
手首を返す
もう少し上手くやれなかったかと
手の平の皺を数えながら
しっかりと
掌を握る
まだ燻っているのかと
手の中に鼓動を感じながら
いまいる部屋を飛び出して
いつかの自分を唆して
いくつかの分岐を引き返すと
いかなる今日に流れ着くだろうか
近づきすぎて 見失って
感じたままに動けなくて
あのとき掴めなかった手を
いまなら掴めるだろうか
記憶の海に浮かぶ影は
後悔でも懺悔でもない
一切れの ただ一切れの
感傷という名の小舟