ひらやま
·

ゆっくりと

右手を伸ばす

その手を掴めないかと

薄暗い部屋で寝転びながら

 

ゆったりと

手首を返す

もう少し上手くやれなかったかと

手の平の皺を数えながら

 

しっかりと

掌を握る

まだ燻っているのかと

手の中に鼓動を感じながら

 

いまいる部屋を飛び出して

いつかの自分を唆して

いくつかの分岐を引き返すと

いかなる今日に流れ着くだろうか

 

近づきすぎて 見失って

感じたままに動けなくて

あのとき掴めなかった手を

いまなら掴めるだろうか

 

記憶の海に浮かぶ影は

後悔でも懺悔でもない

一切れの ただ一切れの

感傷という名の小舟

 

@hrkzkrh
詩の所在地