十畳間

ひらやま
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集中内観三日目

白金台の十畳間

今日も一人

 

来た道を思い出せないくらい

外界との距離が開く頃合い

頭の中に言葉が浮かぶ

 

ここで死んだら

誰にも知られず

あの世へ行ける

 

奥の見えない曲がり角

その手前に立ち止まり

ほっとしていた

 

ぼくに何があっても

車は走る 電車も走る 地球も回る

男女は恋をし 子は生まれ 親になる

疫病が流行り 戦争が起き 人も死ぬ

太陽は輝き 月も輝き オーロラが舞う

 

頼もしさと寂しさを等価に含む

ぼくの存在に関わらず続く世界

 

ならば

人との別れの悲しみも

目から血が出るような苦しみも

握った拳から飛び出しそうな拍動も

味わってから あの世に行こう

 

心に広がる十畳間

今日も一人

 

@hrkzkrh
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