※全ネタバレありです。

ペルソナシリーズの巨匠3人(橋野桂・副島成記・目黒将司)が作り上げた最新作。「ペルソナ」は我々と同じような世界での学生のジュブナイル(青春)をメインテーマにしていたのに対して、今回は「ファンタジー」の世界。様々な種族が混在する世界で「王位継承権」を巡って「メガテン/ペルソナのような」力を持つ者たちの物語となっている。
ストーリー
ストーリーに関して、ゲーム情報記事のレビューに載っているので、そちらを見たほうがわかりやすいです。
王が死んだので次の王を選挙で決めよう!じゃあ王になったら何してくれるの?
圧倒的な力で支配?宗教による統治?多様な種族の平等?それとも他の方法で?
みたいなのが渦巻く世界。でも私自身は正直選挙うんぬんよりも、主人公の目的である「ユークロニアの王子の呪いを解く」ために、最大の敵である悪の根源ルイを倒すことぐらいしか眼中になかったので、あんまり他の候補者とバトる(演説し合う)ことをしなかったんですよね。
もちろんルイも候補者であり、なおかつ大本命であるので、ルイを倒す=自分が王になるということだったのですが、途中までは「とりあえずルイを倒したいから王の選挙に立候補して近づこう」という目的でストーリーが進んでいました。

しかしストーリーを進めていくうちに、「呪いをつけたのはルイ」というものではなかったし、なんなら候補者の1人であり、前王の側近であり、国内最大宗教である惺教の教主様フォーデンに虐げられた被害者の1人であったということが明らかになります。
それでもルイは自分の理想の世界を作ろうとしますが、それが主人公の考え方と相反するため、結局最後の最後まで戦うことになります。
選挙といえば最近だと衆議院選挙とか、色々話題になってる知事選とか、少し外を見てみればアメリカ大統領選とかあったから、選挙とは何かと考えてしまうし、じゃあ「理想の世界」とはどんな世界なのかと想像してしまうし、今の現実世界はというと彼らの世界と同じで、人種差別もあり、宗教による戦争もある。決して我々の世界が理想郷ではなく、この世界がメタファー(暗喩)なんだとゲームを通じてよりいっそう感じてしまうこともありました。
個人的によかったストーリーは、呪いをかけられた王子がルイの手先によって殺されてしまったあたりからの展開でした。いかにも「アトラスらしい」大逆転・起死回生の展開だなと思って安心しました。

アーキタイプ
先にメタファーでの戦いの大前提となる「アーキタイプ」の話をしておきます。FFでいう「ジョブ」みたいなもので
戦士ならファイター→ソードマスター→…
黒魔道士ならマジシャン→ウィザード→…
白魔道士ならヒーラー→プリースト→…
赤魔道士ならシーカー→マジックシーカー→…
…みたいに各アーキタイプが存在していて、それぞれには通常・上位種・最上位種が存在しています。アーキタイプはある程度の条件を満たせば誰でも全てのアーキタイプを装備することができます。
ただストーリー上、そこまで自由につけられるかと言われるとそこまででもないし、キャラによって得手不得手があります。それでも「回復魔法だけ覚えさたいから、ひとまずヒーラーになって回復魔法を覚えさせてから他のアーキタイプで継承させる」といった手法もあり、このあたりは結構自由にできるので面白かった。
さらにキャラクター固有の最強アーキタイプ「ロイヤル」が存在していて、それが実質最強になるが、そのあたりは最後の方で解放される。

あとメガテン/ペルソナシリーズにおいて「回避率は正義」ということを知っているからか、味方全体の素早さを上げる「マハスクカジャ」を覚えるアーキタイプは1種類だけでした。攻撃・防御は全体2段階上げれるスキルまであるクセに、素早さに関してはマジで最上級アーキタイプのピンポイントなアビリティだった。
まぁ最終的に素早さの鬼であるハイザメに覚えさせてしまえば全て解決だったんですが(後述)。
メインキャラクター
1. 主人公

CV花江夏樹。主人公はレベルアップ時にステータス上昇値を好きに降ることができます。最初は魔力を上げればいいやと思って魔力全振りしていたのに、ロイヤルのメイン攻撃が物理だったので思いっきり育成失敗しました。まぁそれでも殴ればほどほどに強いし、回復・バフキャラになったからいいかな。
ちなみに名前は自由に決められたので「モンブラン」にしました。たいがいカタカナの名前に迷ったときは「マドレーヌ」とか「フィナンシェ」とか美味しそうなお菓子やスイーツの名前にしています。
2.ストロール

CV小野賢章。真面目枠。だけど時折ゴリ押しでなんとかしようとするのが玉に瑕。ストロールは基本「剣士」アーキタイプで、ロイヤルまで成長すると「空間殺法」「ブレイブザッパー」そして、ペルソナシリーズお馴染みヨシツネの物理最強技「八艘飛び」(斬属性全体8回攻撃)も覚えるんですが…
全部MP消費技なのよ!!なんでなのよ!!HP消費技だったからいいんでしょ!!
なので最後の最後で「使うの難しいなぁ」となったキャラクターでした。
3. ヒュルケンベルグ

CV早見沙織。カッコいい王子側近騎士。でもちょっとミーハーだし、変なもの大好きなヒュルケンベルグ。
戦闘はというとタンク型で魔法もまあまあ使える。でもタンクは単体攻撃系にしか有効じゃないし、全部ハイザメが避けてくれるから……となったら後半でほとんど使わなくなってしまったキャラです。味方への無効付与アビリティは強いんだけどねぇ。
4. ハイザメ

かわいい。CV大塚明夫。しかしかわいい。所作のすべてがかわいい。けど中身はおっさん。そして敵の攻撃を回避する最強の男。回避すると敵のターンが一気に少なくなるのでそれはもう便利便利。
ロイヤルだと更に素早さは上がり、そして最終奥義が
「ハイザメが攻撃を回避したら、その時点で敵のターンは終了する」
というアビリティ。ペルソナでもおなじみ回避率アップの「心眼」もつけて、さらに素早さアップの「マハスクカジャ」かければ、あら不思議。いつの間にか敵のターンは攻撃1回で終了です。
主要なボス戦、ほぼ全部ハイザメ入れてました。そのぐらい強い。
でもなんでアサシンの呼び方が「ア↑!サ↑!シン!」だったのかはみんな疑問に思っていると思う。ちょっとめずらしいハイテンション大塚明夫でした。かわいいし強いから全部許すんだけど。
5. ジュナ

CV南條愛乃。魔力アゲアゲで最初は「おっ、魔法要員きた!」と思うじゃない?彼女のメインアーキタイプの上位種に「フェイカー」というのが必要になってくるので、フェイカーを育てるじゃないですか。そしてデバフ系のアビリティ覚えてしまうと完全にデバフの鬼となるので、魔力とかいらないです。
別に魔法使わせてもいいけど、終盤になってくるとどれが弱点かを把握するのも面倒だし、なによりジュナには敵が無効であろうと反射であろうと「弱点付与」する技を覚えるので、バフと弱点付与さえしてれば最強なんですよね。
ちなみに基本アーキタイプは「マスクドダンサー」、上位種は「ペルソナマスター」なので
「ペルソナマスター!!」
と呼び出すところは「ペルソナァ!」と呼び出したくなったよね。
6. ユーファ

CV福圓美里。ムツタリ族という特殊な種族なので3つ目があります。基本アーキタイプは「召喚士」なので、全体攻撃が多い雑魚戦は得意。逆にボス戦はMP消費激しすぎるので、スピード勝負しないといけない。
なお召喚士上位はメガテン/ペルソナシリーズでお馴染みのジャックフロスト、ジャアクフロスト、デカラビア、ベルゼブブ…と色々呼び出せるのは楽しかった。しかしジャアクフロストの呼び出しMP40以上…
終盤のレベル上げでヴィシュヌの全体光魔法がアンデッドに効きすぎて1ターンキルできたのは楽しい思い出です。
BOND(コミュ)の「ムツタリ族によっての"握手"の意味」のところがすごくかわいかった。今回のBONDには恋愛的な要素はないんですが、ユーファのコミュが「好きのライン」に一番近いような、でもきっとそれは「信頼」と言う名の好きという気もしました。
7. バジリオ

CV細谷佳正。物理最強お兄さん。本当のお兄さんはショタ(CV緒方恵美)ですが残念ながら殺されてしまいました……手先が器用でお料理できる系男子。お菓子にデコレーションもできちゃう系男子。
正直相手が壊属性無効・反射じゃなければ、バジリオで殴り続けるだけで勝てる。そしてロイヤルになったら弱点付与し続けながら殴り続けられるという実質「破壊屋」になります。ダメージソースの要なので、バジリオも基本ボス戦メインメンバーです。
8. ガリカ

CV諸星すみれ。いつも主人公と一緒にいる妖精兼ナビゲーター。結構好きです、ガリカちゃん。多分私が最近見てるVtuberに似ているから、というのもありそう。
しかしあなた、装備画面があったのに一度も装備変えたことないじゃない!?あれなんかの伏線かな?と思っていたのにそんなこともなく、終盤ではプレスターンをたまにくれるだけで終わったという。もうちょっとガリカ自身にも力の覚醒的なものがあると期待してました。
BOND
ペルソナでいう「コミュ」のこと。これを上げることでアーキタイプの上位種が解放されたり、ダンジョン攻略に有利な効果をもたらしてくれる。

ちなみにこれはBONDの1人である「治療師」マリアちゃん(CV石川由依)。かわいい。そして主人公のCVが花江夏樹ということは…
2B…9S…うっ、頭が…
(だんご…ほねチキン…うっ、頭が…)
ペルソナシリーズのコミュは厳密なスケジュールをこなさないと全コミュMAXにすることができませんでしたが、メタファーのBONDは
BONDのMAXが8(ペルソナのコミュMAXが10)
会話の選択次第でBONDが上がらない、ということがなく必ず1回でランクアップする
選択肢による増減値は「MAG」と呼ばれるアーキタイプの解放などに使われるポイント量になった
ダンジョン移動中でも(旅の仲間であれば)上げることができる
王の資質(ステータス)が必要な場面もあるが、これも上げやすい
ということもあり、少し余裕を残して全BONDをMAXにすることができました。ペルソナのコミュもこのぐらいがいいな…
ダンジョン
もうちょいメインダンジョンらしいものがあってもよかったのかな、と思いました。というのもメインストーリーの流れとしては
大きな街に行く
何か異変がある
メインダンジョンの潜入・調査・ボス討伐を期限までに行う必要がある
期限までに行うメインダンジョンを攻略する
ストーリーが進む
次の街に行く
と言った感じなので、メインダンジョンはその各都市に1つといった形になります。
これを回避するためにクエスト用のサブダンジョンがあるんですが、3パターンしかなくて
洞窟系
これは洞窟ごとに結構複雑なので楽しい
森林系
これはどこも大体一緒なので作業ゲー
塔系
これもどこも一緒だし、思ったほど塔の高さはない
これはペルソナ3の弊害だと思っている(cf.タルタロス)
なので正直そこまで楽しくない。なので、最初の洞窟みたいに移動途中にダンジョンがあって、それを攻略しないと先に進めない、みたいなポイントが2,3回ぐらいあってもよかったんじゃないかなーと思う。
あとラストダンジョンですが、
回復し放題でした。いいのかよ。
今までメインダンジョンで回復もできずに一生懸命MPの節約をしながら攻略をしてきたというのに、最後の最後で何も考えなくていいし、さらにレベル上げし放題って。というのでちょっと呆気に取られました。
バトル

HARDでやったからかもしれませんが、後半まで「敵からの先制攻撃受けたらほぼ全滅確定」になるし、それを回避したとしてもHP満タンの敵を倒すのは一苦労する。
先制攻撃に失敗しそうな時にさっと「SQUAD」してバトル開始させることもできるけど、これのメリットは「とりあえず逃げる」ことぐらいなので結局使わなかった。
よって先制攻撃に失敗するとデメリットしかないし、立ち直りも面倒なので結構途中まではリセットボタン押してオートセーブ後から復帰する。といった形を取っていたことが多かったです。
つまり「先制攻撃」はバトルにおいて必須になるんですが、近距離攻撃系アーキタイプだと技の隙を突かれた瞬間に終わる。長期戦覚悟のダンジョンでHP/MPの浪費を防ぐためには先制攻撃を絶対に成功させないといけない。
なので「ガンナー」とか「フェイカー」とか遠距離からでも攻撃できるアーキタイプをついつい付けてしまう。私の主人公、しばらくガンナーでした。でもガンナーばかり育てても仕方ないので
ガンナーで先制する
敵が倒れる(先制攻撃のチャンス発生)
一回メニュー開いて主人公の育てたいアーキタイプに変える
SQUADする
で先制攻撃バトルを開始させてました。まぁ~全然スタイリッシュじゃない。
肝心のバトルは面白いです。基本は
先制攻撃した初ターンに仕留めきるか
できない場合は先制攻撃で気絶状態になっているのをいかに解除せずに2ターン目に持ち込むか
の2択がほとんどです。3ターン以上かかる場合はボス戦と同様に素早さをどれだけ下げられるかが勝負です。
基本HARDでも戦闘のやり直しは何回でもできるので、気に食わない場合は何回でもやり直すことができます。「盗む」も成功するまで何度もやり直せる。便利。これは正直今後のペルソナシリーズに追加してほしいぐらい。
でもそもそも現行パーティで出せる技全部出しても弱点見つからない場合はどうしようもないので、なんとかゴリ押すしかないです。そこは従来と変わらず。
あと味方のターン2つ使って行う協力/強力技「ジンテーゼ」は基本「弱点突く攻撃じゃないと使わない」です。プレスターンって味方の数だけあって、通常は4ターンなんですが、弱点をつけば最大8ターン行動できるんですよね。なのでプレスターン2個使う場合は弱点ついてもう2ターン増やすほうがお得です。中途半端なことしても仕方ないです。
序盤の「弱点付与しながら攻撃する」ジンテーゼは強かったです。でも途中で仲間になるジュナが1人で属性弱点付与できちゃうし、最後に仲間になったバジリオなんか1人で弱点付与しながら攻撃できちゃうので、そのあたりのジンテーゼはいらなくなりました。終盤ですがバジリオの「狂気の破壊」はダメだよ、あれは。
ボス
ラスボス弱ぇ!!

てっきりペルソナ5のヤルダバオトみたいにいろんな属性耐性・無効・反射の腕とか羽とか出してくるのかなと思ったら、そんなの一切出してこない!!
そして本人も耐性・無効・反射なし!!なんでや!!
まぁラストダンジョンにこもってレベル上げしてたからかもしれない。それでもよ。それでももうちょい強い攻撃や部位分離とかあってもよかったのでは。と思ってしまう。
レラ様が召喚してた竜神ソグネの方がよっぽど強かった。毎ターン必ず魔法反射かけるから、実質物理攻撃しか通らなかったし、本当に一番キツいボスはここだった。次点で塔の三竜神戦ね。

塔の三竜神も
全属性反射持ちなので万能属性の攻撃しか通らない竜神
自身に反射を持っていると一生凶暴化する竜神
全体誘惑をかけたあとに全体9999固定ダメージの炎攻撃をしてくる竜神
とバリエーション豊かで色々戦略考えながらできたので楽しかったです。
でもラスボスは……ラスボスは納得いかないんだぁ……
音楽
目黒将司さんの音楽はやっぱりここでも健在。
個人的に好きなのは
猛きものたちよ(先制攻撃時バトルBGM)
旅の脚(凱旋車移動前半BGM)
自由の翼(凱旋車移動後半BGM)
あたりでした。戦闘はもうダントツで「猛きものたちよ」が好き。歌うお坊さんカッコいい。
凱旋車移動BGMついつい口ずさんでしまうし、ちょっとFF6の「飛空艇ブラックジャック」からの「仲間を求めて」に変わったくだりを思い出したりして、とてもよかった。最初はドタドタした感じなのに、空を飛ぶとなるとそこからスッキリした旋律に変わるのがすごくいいよね。
ペルソナやってる身からするとやっぱりいつまでもバトルが楽しいってのは最高だな、と思う反面、「めちゃくちゃベタ褒めされるゲームかと言われるとそこまででもないような気もする」というのが私の感想でした。楽しかった部分もあったけど、ちょっと拍子抜けした部分もいくつかあったので。
でも「メタファー」シリーズとしては一番最初に出されたものであって、これからどんどんブラッシュアップされると思っているだろうし、やっぱりアトラスのゲームって時間を忘れて永遠にバトルができるという楽しさが健在していたので、この感じがずっと続いてくれるといいなって思います。
