そのコストは誰が負担したか

hyroki1980
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もうちょっとだけ広告とプライバシー保護とターゲティングや計測の話をしてみたい。かつ、論点をちょっとだけ変えてみる。

インターネットでサービスを享受するためにお金を支払うだったものが、嫌な経験をしたくなければお金を払えという世の中になった。というコメントを見るようになったのだけれども、確かにおっしゃる通り過ぎる気はする。

有料会員だけ記事が読めますじゃなくて、広告が入らない形で記事が読めますとかアプリが利用できますっていう表現が多くなりましたよね。

どこかのサイトに行けばコンテンツが隠れるほど広告が表示されるし、しかも自分とは関係なかったり低品質な広告だ。メディアだって今まで無料で読めていたニュースがお金を支払わないと見られなくなってきている。

あれ?そもそもコンテンツって無料で享受できて、みんなのやりがいによって提供されていたんだっけ?

コンテンツが無料で届けられるのは広告のおかげでもある

コンテンツを無料で享受できていたのであれば、誰がそのパブリッシャー(メディアだったりアプリを提供する主体)にお金を払っていたのだろう?あしながおじさん?それとも自分で預貯金を切り崩している?

そうではなくて、広告収益があるからある程度無料でコンテンツを提供できている。だから、コンテンツが無料で享受できるというのは広告主がその負担をしてくれているからだとも言える。

テレビも同じ。NHKは公共放送という立場上テレビ放送内に広告を差し込まない代わりに受信料制度が存在するし(受信料制度の是非はさておき)、民放はCMを中心に広告費を得ることができるから放送が続けられるという仕組み。

それがプライバシー保護を目的として広告のターゲティングや計測ができなくなってきたこともあり、広告費用対効果が不正確になりつつある。広告主からすれば費用対効果が不明瞭な物に投資をしたくないという気持ちも分かる。

プライバシー保護と引き換えにだれがそのコストを支払うのか

繰り返すけど、プライバシー保護を進めるにあたって、ターゲティングや広告効果の計測がしにくくなってきているし、2024年は Google Chrome が 3rd-Party Cookie のサポートをいよいよ終了する予定になっているので、より運用型広告の費用対効果が不明瞭になってくる時代に入る。

プライバシーは保護されて当然ではあると僕は思うので、プライバシー保護の流れが進むことに異論は全くない。その一方で、プライバシーを保護と広告の両立について未だに話が明るい方向に向かないのは残念。

大手のメディアサイトですら広告でコンテンツが見えなくなったり、リワード広告(広告を見たらコンテンツが読める)を導入するようになっていて、じゃぁ完全に有料にすれば良いじゃんという風に思うけど、そうなるとまだ無料でコンテンツを享受できるサイトにトラフィックが流れるだけだから、有料にはしないけどユーザーに負担を強いる(ユーザーが一部のコストを支払う)ことで収益とトラフィックとのバランスを取っているのが今なのかなと思う。本当にチキンレースの様相。

もちろん、収益化が難しい理由はプライバシー保護の煽りを受けただけではなく、そもそもメディアの乱立やSNSなどのプラットフォームの増加によるトラフィック分散などもあったりするので、一概には言えないのだけれども。

結局のところ、

  • プライバシー保護が進む

  • →広告のターゲティングと計測が不明瞭になる

  • →広告への投資が減る

  • →メディアの広告収益が下がる

  • →広告枠を増やして収益を維持しようとする

  • →それでも収益が足りず低品質な広告も表示せざるを得なくなる

  • →UXの低下をユーザーに強いる形になってしまう

  • →広告忌避が発生する

  • →メディアの広告収益が下がる

  • →以下ループ

個人的にはこんな感じになっている気がしてならない。

プライバシー保護に対するコストが増えたことによる代償

プライバシー保護が進む中でも、広告プラットフォームが提供する計測の仕組みを導入しようとするから、メディアも広告主もそれに対応するためのコストを実は支払っている。

だからメディアや広告主は偉いんだと、コンテンツを享受したいならお金を払えと言いたいわけではなく、今のところユーザー・メディア・広告主どの方面をみてもプライバシー保護のおかげで幸せになったなぁという声が聞かれないことは気になるところだなと。

メディア側の行き過ぎた広告配置などに対しては、ユーザー側がアドブロッカーを利用するということも一般的になってきたけれども、アドブロッカーだって無料(有料もしくは寄付によって運営)じゃないので、結局はユーザーがコストを支払っている形になっちゃっている。しかも後ろ向きな理由で。

メディアが増えてきた理由のひとつとして僕が考えるのは、Google AdSense の普及によって誰でもがコンテンツを作って収益化できるようになったこと。YouTubeがここまで大きくなったのもこの影響はあると思う。

一方で、低品質なコンテンツを提供するメディアやアフィリエイトサイトも増えてきた気がしていて、何かリサーチしているときにこのあたりのコンテンツばかりに接触することもあり、ちょっと食あたり気味な気持ちになる事だってある。だから、全てのメディアを擁護するつもりもないけど、本当に良質なコンテンツを提供する個人もたくさんいるので、そういう方にスポットライトが当たるような感じになると良いなと思う(Google 検索を遠回しに批判してます)。

広告だってサポート詐欺とかフィッシング詐欺の広告が現実として確認できてしまっている以上、これらを防いでいく手立てがなければ、真っ当な広告ですらクリックしてもらえなくなり、より広告離れが加速してしまう。負のループ過ぎる。

誰が悪いとかそういう議論をしたいわけではないのだけど、問題となる要素が複数あって複雑に絡んでいるからこそ明るい光が差しづらい構造になっちゃたのかなと感じる。

これがみんなの望む世界なのであればそれで受け入れるのだけれども、国やプラットフォーマーやデバイスを提供するビッグテックとか、なんとかもうちょっと仲良く上手くやってくれないかなと思う。自分ひとりの力ではなしのつぶて感がすごい。

これも資本主義のバグなのかな。

今日もまとまりのない駄文を生んでしまったにゃん。

@hyroki1980
役に立たないひとりごとばかりポストする、マルチバースの中に生きている人